・双極性障害とはどういう病気なの?
・双極性障害の治療で注意することを知りたい
・双極性障害になった家族の相談どこにすると良いの?
双極性障害の診断を受けたあと、じぶんがどうしていけばいいかこのように悩んでいる方はいらっしゃいませんか?
双極性障害とは、うつ状態と躁状態を繰り返す病気です。
双極性障害と診断されるのは、一般的に20歳代から30歳代といわれています。しかし、幼少期から50歳代の方も診断を受けるケースもあります。
症状は、躁状態とうつ状態を繰り返すため、うつ病と間違えて診断されることもあり、双極性障害と診断されるまで時間がかかった方もいらっしゃいます。
双極性障害の治療を続ける中で、症状が徐々に出現していって、早く手を打てば症状が軽快するものが誰にも相談できないことで、これよりも症状が悪化してしまう可能性があります。
また、躁状態のときに状態が良いと見逃されるケースも少なくありません。
今回は、双極性障害はどのような病気なのか特徴や症状を踏まえ、診断や治療法を家族とともに注意点を理解し、いざという時の前に相談できる窓口を知っていただくため、この記事で解説しています。
双極性障害と診断された方やご家族だけではなく、パートナーや友人にいらっしゃる方も是非ともこの記事を参考にしてみてください。
双極性障害を知る
双極性障害の治療や相談の方法を知る前に、双極性障害とはどういった病気なのかを知ることから始めましょう。
双極性障害とはどんな病気なのか?
双極性障害とは、簡単に説明すると気分の落ち込みや気分の高揚感を繰り返す脳の病気です。気分障害の一種でもあり、躁うつ病と言われることもあります。
激しい躁状態とうつ状態がある双極Ⅰ型と、軽い躁状態とうつ状態がある双極Ⅱ型にわけられます。日本では、約500人に一人と言われています。
双極性障害の特徴
双極性障害の特徴は、先述したとおり気分が高揚する躁状態と、落ち込みがあるうつ状態を繰り返すことです。
軽躁状態で数日間、躁状態であれば1週間以上、うつ状態は2週間以上続きます。これは、その人のエピソードによって変動があります。
明らかに躁状態であれば周囲の人が気づくこともできますが、軽躁状態であれば「調子が良くなった」と症状の出現を見逃してしまう可能性があります。
双極性障害の症状(躁状態)
双極性障害の躁状態においては、以下のような症状が出現します。
- 気分が高揚する
- 考えが飛躍する
- 楽天的な発言がある
- 性に奔放になる
- 自信に満ちあふれている
- 眠らなくても活発に活動ができる
- 自分の収入に見合わない高価なもので散財する
- ギャンブルで散財する
- イライラする、怒りっぽい
- しゃべりすぎる
- 電話をかけまくる
- 自分は何でもできると考える(誇大妄想)
- 次々に考えが浮かぶ
双極性障害の症状(うつ状態)
双極性障害のうつ状態においては、以下のような症状が出現します。
気分の落ち込みがある疲れやすい眠れない、眠りすぎるなど睡眠障害がある意欲が減退する、何もかもがおっくうに感じる集中力がない死を考えて行動しようとしてしまう(自殺企図、自殺念慮)自分を責めてしまう食欲の減退、体重減少身の回りのことに気が向かない、興味がなくなる自分には価値がないと感じてしまう思考が止まってしまう
双極性障害の症状(混合状態)
双極性障害の混合状態には、以下のような症状があります。
- 気分は高揚しているのに涙が出る
- 行動ができないことにイライラや焦りを感じる
- 落ち込んでいるのに次々と考えが浮かぶ
- 焦燥感といらだちが顕著
- 衝動性が高まる
- 行動性が高まり、希死念慮が強まる
双極性障害の原因
双極性障害の正確な原因ははっきりとはわかっていませんが、遺伝的要因と環境的要因が関与しているといわれています。
- 体内で作られる特定の神経伝達物質が正常に働いていない。
- 親族に双極性障害がいる場合に、遺伝子が受け継がれる可能性がある。
- 育ってきた環境、仕事や周囲の人間関係によるストレス、生活リズムの乱れ。
- 周産期の母親のインフルエンザ罹患や喫煙によるもの。
- 小児期の逆行体験
双極性障害の診断とタイプの違い
双極性障害の症状については理解できたけれど、どうやって診断されるかご存じでしょうか?
この項目では、双極性障害の診断基準とそのタイプの違いについて解説しています。
双極性障害の診断の基準
双極性障害の診断基準には、以下の項目があります。
- 気分が持続的に異常に高揚し、開放的、易怒的になる。亢進した活動や活力がある。このような期間が少なくとも1週間、ほぼ毎日続く。
- 以下のうち少なくとも3つ(気分が易怒性のみでは4つ)を認める。
①自尊心の肥大・誇大
②睡眠欲求の減少
③普通より多弁、しゃべり続けようとする
④観念奔逸、いくつもの考えが沸いてくる
⑤注意が散漫になる
⑥目標志向性の活動や精神運動が焦燥している
⑦悪い結果になる出来事について夢中になる
- 社会的・職業的に著しい障害を引き起こしている
- 何らかの物質による影響ではない
気分が持続的に異常に高揚し、開放的、易怒的になる。亢進した活動や活力がある。このような期間が少なくとも4日間、ほぼ毎日続く。
他の項目においては、躁病エピソードと同様である。
以下の症状のうち5つが2週間の間に認められ、そのうち少なくとも一つは①か②である。
①抑うつ気分
②興味や喜びの喪失
③体重の増減・食欲の異常
④睡眠障害
⑤精神運動焦燥・精神運動制止
⑥疲労感・気力低下
⑦無価値観・罪責感
⑧思考力低下・集中力低下
⑨希死念慮
苦痛が明らかであるか、社会的・職業的な機能障害を認める。物質によるものではなく、その他の病気によるものでもない。
双極Ⅰ型障害
双極Ⅰ型障害は、医師による問診と心理検査を行います。また、「躁病エピソード+うつ病エピソード」を繰り返します。
特徴は、以下のような状態です
- 夜も眠らず歩き回る
- 大きな声で話す
- 易怒性、攻撃的
- 高価なものに散在したり、投資をする
これらのことにより、以下の状態に陥ってしまいます。
- 社会的な問題を起こす
- 仕事を失ったり、家族と疎遠になったり、多額の借金を背負う
- 躁状態の悪化により、未来を予知できると現実離れな妄想や幻聴
双極Ⅱ型障害
双極Ⅱ型障害は、医師による問診と心理検査を行います。また、「軽躁病エピソード+うつ病エピソード」を繰り返します。
特徴は、以下のような状態です。
軽躁状態では、気分が高揚し爽快に感じ、エネルギーに満ちあふれている睡眠時間が短く、一日中動き回れる話したいことが次々に浮かび、相手の話を聞くことができない、迷惑に気づかないうつ状態では、人と会うことやこれまで楽しんでいたことがおっくうになるネガティブなことばかり考えてしまう
軽躁状態では、社会的な問題を起こすことは少ないと考えられています。また、慢性化しやすく、軽躁状態よりもうつ状態が長くなり、重症になる傾向があります。軽躁状態とうつ状態を繰り返すため、うつ病と間違えて診断されるケースも少なくありません。
双極性障害とうつ病(鬱病)の違い
よく耳にするうつ病と双極性障害との違いはどのようなことがあるのでしょうか。
うつ病とは、気分の落ち込みや意欲の低下、不眠などの睡眠障害といったうつ症状のみが出現します。
双極性障害とは、前述しているとおり、うつ症状だけではなく軽躁状態や躁状態があり、それを繰り返すのが特徴です。
軽躁状態とうつ状態を繰り返している状況では、間違ってうつ病と診断され、治療が遅れてしまう場合があります。
双極性障害の治療と注意点
双極性障害の診断を受け、次は治療を開始していきます。
治療はどのようなことがあるのでしょうか。または治療を受ける本人だけではなく、家族や周囲の人はどのようなことに注意を払う必要があるのでしょうか。
この項目で詳しくみていきましょう。
休養をとる
まずは、ストレスになっている状況から離れて休養を取りましょう。仕事などによるストレスを感じている場合は、可能であれば休職または離職を考えても良いでしょう。
薬物療法
双極性障害の薬物療法においては、気分安定剤や非定型抗精神病薬が用いられます。
気分安定剤には、バルプロ酸、リチウム、カルバマゼピンなどがあります。
非定型抗精神病薬は、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾール、リスペリドンなどがあります。
処方された薬物を医師の指示のもと、確実に服用していくことが重要です。少しでもよくなったとおもい、自己中断しないように注意が必要です。
カウンセリング
次に、心理カウンセリングも大切な治療の一つです。
精神科病院やメンタルクリニックなどで、診察やカウンセリングを受けることをいいます。自分や家族の状況を話し、治療の方向性を検討していきます。
症状が多様な双極性障害においては、医師の診察により薬物の検討が重要になっていきます。
心理社会的療法
本人が病気について知り、それを受け入れ、自らコントロールできるように支援していくことが心理療法といいます。
また、自分の生活習慣を見直し、睡眠時間を確保する、再発の兆候に気づいて自ら対処できる、再発時に早期に治療を開始できることが大切です。
治療を受ける自らが気分の波に気づいて、自らの考えのくせを認識できるように学んでいきます。
責めない
双極性障害の治療を受けている本人や家族は、病気によって症状が起きていると考えて本人を責めないようにしましょう。
また、そうしてしまったと家族の方が自分を責めてしまうことのないようにすることも大切です。
これまでの状況や不安なことなど、主治医へ相談できるようにします。
再発の兆候を見逃さない
心理社会的療法で学んでいる、再発の兆候を見逃さないようにしましょう。
気分の変動が起きそうになっていないか、行動や言動の変化はないか注意して観察していきます。
再発の兆候が見られた場合、早期に受診し治療を開始できるようにします。
自殺のサインを見逃さない
自殺念慮、希死念慮については、うつ状態だけではなく躁状態でも注意が必要です。
再発の兆候と同様、行動や言動に注意する必要があります。また、危険なもの、たとえば刃物などが本人の手に入るところにないかを観察していきます。
生活のリズムを整える
食事を取る、睡眠時間の確保、刺激の少ない静かな環境で休養するなど、生活のリズムを整えるようにしましょう。
治療開始してからすぐにリズムを整えることは難しいでしょう。
徐々に整えるために、一日の生活については本人と話し、できることから少しずつ始めていくようにします。
双極性障害の人が相談できる窓口
双極性障害について、誰に相談したら良いか迷っている方もいらっしゃるかもしれません。
この項目では、相談窓口について解説しています。
精神科病院、心療内科、メンタルクリニック
自分が受診している精神科病院、心療内科、メンタルクリニックに相談するのも良いでしょう。
以前は、これらの医療機関を受診することに対して強い拒否感を感じていた人も少なくなかったのですが、現在はそういったことは全くありませんので安心して良いでしょう。
双極性障害の診断は受けていないが、起きている状況がその可能性があると感じている方も、専門の医療機関に相談することが一番早く治療を開始することができます。
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターとは、都道府県に設置されている心の健康相談、精神医療に関する相談、社会復帰相談、アルコール・薬物・思春期、認知症などの精神的な相談を受け付けています。
地域住民の精神的健康の保持・増進、精神障害の予防、適切な精神医療の推進、 社会復帰の促進が主な役割です。
相談できるのは、精神疾患や精神症状がある本人だけではなく家族や地域の支援者などです。
各都道府県の保健所
各都道府県に設置されている保健所でも相談を受け付けてくれます。
働く人の「こころの耳相談」
初めて聞く方もいらっしゃるかもしれません。
厚生労働省の、働く人の「こころの耳相談」が不安や悩みの相談を受け付けています。受け付けている曜日と時間が決まっているので事前に調べておきましょう。
また、電話だけではなく、SNSやメールでも受け付けているため、自分に合った方法で相談できます。
心の健康相談統一ダイヤル
厚生労働省の、心の健康統一ダイヤルでも不安や悩みの相談を受け付けています。
これは、全国どこからでも共通の電話番号に電話すれば、電話をかけた所在地の公的な相談機関に接続されます。
自分の悩みや今後はどうすれば良いのか、具体的に相談することができます。
精神科領域の専門知識がある訪問看護ステーション
一番近い存在で、治療を継続させるためには重要な存在となる、精神科領域の専門知識がある訪問看護ステーションへ相談することをおすすめします。
生活リズムを整える、薬物療法の継続、家族支援、気分の変動・症状悪化の兆候に気づいてもらうためには、専門知識がある看護師や作業療法士などの支援が重要になります。
医療機関では相談しづらいこと、相談するきっかけを無くしていたことなど、医療機関との連携を取ってもらい、安心して治療を継続することができます。
双極性障害の治療をつづけながら自分らしく生活をしていきましょう
いかがでしたか?双極性障害と診断を受けたときには、どんな生活をしたら良いのか、家族としたらどう接したら良いのか、誰に相談したら良いのかわからず困っていた方も多かったのではないでしょうか。
悪化の兆候を見逃さずに早期に相談したり、すぐに相談できる訪問看護ステーションを利用し、自分らしく生活を送れるようにしたいですよね。
双極性障害の症状や特徴を理解し、専門知識のある相談窓口を上手く利用できるようにしましょう。
病気だからと周囲に相談できない、家族のことだからと困っている方へこの記事が手助けになれば幸いです。
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