・訪問看護のキャリアアップってどんなこと?
・訪問看護で使える資格は何があるのだろう
・キャリアアップをするメリットってあるの?
訪問看護師として働く上で、このようにキャリアアップについて不安に思っている方はいませんか?
訪問看護の道に進んだけれど、このまま何もせず過ごしているとモチベーションも上がらず月日が経過するだけで、周りがキャリアアップしているのに乗り遅れてしまうかもしれません。
病院勤務の時には、管理職や専門の資格取得のための支援があったり、その方法を簡単に知ることができたりしていましたが、訪問看護ではどうなのでしょうか。
実は、訪問看護師としてのキャリアアップをすることは可能なんです。
この記事では、訪問看護におけるキャリアアップ、看護を極めるための資格やキャリアアップのメリット、デメリットについて解説しています。
訪問看護で働いてみたい方や、訪問看護師として働いている方でキャリアアップをしたいと希望されている方は、是非ともこの記事を参考にしてみてください。
目次
病棟と訪問看護でのキャリアアップの違い
看護師として働いていて、「将来こうなりたい」とキャリアアップを望む方もいらっしゃるでしょう。
病棟と訪問看護では環境が違うだけでなく、働き方も違ってきます。目標としている仕事の理想と現場のギャップがあることに気づいていない方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、キャリアアップにおいて病棟と訪問看護にはどのような違いがあるのでしょうか。
この項目で詳しく解説します。
病棟でのキャリアアップ
キャリアアップとは、特定の分野において今よりもさらに専門的な知識を身につけ、経験を積み能力においても向上させることをさします。
病棟でのキャリアアップをするには以下のようなものがあります。
・認定看護師
・専門看護師
・特定行為研修
・ケアマネージャー
また、主任看護師や師長などの管理職を目指すこともできます。
管理職になると看護師個人としてだけではなく、病棟や病院の看護の質向上のためにマネジメントを行います。また、医療事故の予防や再発防止策を導入したり、勤務表の作成やスタッフの心身のサポートも重要な業務です。
訪問看護でのキャリアアップ
訪問看護では、病棟と同じく認定看護師や専門看護師、特定行為研修を受けた看護師の活躍の場でもあります。より専門的な看護の実践が可能で、医師の指示のもとではありますが主体的に看護を実践できるためやりがいをもって働けます。
認定看護師の中でも「在宅ケア認定看護師」といった資格を取得できます。
病棟勤務でケアマネージャーの資格取得は可能ですが、訪問看護の現場では看護師ではなくケアマネージャーをメインとして働くことができます。
他のキャリアアップでは、病棟では主任看護師や師長などの管理職がありましたが、訪問看護においては管理者として働くことができます。
また、管理者だけではなく独立し、経営者になることも可能です。看護師で経営者となれる点では病棟と大きな違いがあります。
訪問看護でキャリアアップのための資格
訪問看護の現場で体系的に知識を深めたいと考えた時に、どのような資格があるかご存知でしょうか。
この項目で詳しく解説します。
認定看護師
・個人、家族及び集団に対して、高い臨床推論力と病態判断力に基づき、熟練した看護技術及び知識を用いて水準の高い看護を実践する。
・看護実践を通して看護職に指導を行う。
・看護職に対しコンサルテーションを行う。
・日本国の看護師免許を有すること
・看護師免許取得後、実務研修が通算5年以上あること
(うち3年以上は認定分野の実務研修)
・認定看護師教育機関入学・修了
A過程認定看護師教育機関特定行為研修を組み込んでいない認定看護師教育機関(2026年を持って教育を修了)
B過程認定看護師教育機関特定行為研修を組み込んでいる認定看護師教育機関(2020年度から教育を開始)
・認定看護師認定審査に合格
・認定看護師認定証交付・登録
認定看護師として活動を開始した後は、5年ごとの資格の更新が必要です。
A過程認定看護師分野は21分野で「訪問看護認定看護師」でしたが、B過程認定看護師分野は19分野では、「在宅ケア認定看護師」に変更されます。
・生活の場におけるQOLの維持・向上とセルフケア支援
・対象を取り巻くケアシステムの課題に対する解決策の提案
・生活に拠点を当てた在宅療養移行支援及び他職種との調整・共同
・意思決定支援とQOLを高めるエンド・オブ・ライフケア
・身体所見から病態を判断し、気管カニューレの交換が安全にできる知識・技術
・身体所見から病態を判断し、胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換が安全にできる知識・技術
・身体所見から病態を判断し、褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去が安全にできる知識・技術
他には、「緩和ケア」「皮膚・排泄ケア」「緩和ケア」「認知症看護」などの認定看護師も訪問看護の現場でも活躍できます。
専門看護師
・個人、家族及び集団に対して卓越した看護を実践する。
・看護者を含むケア提供者に対してコンサルテーションを行う。
・必要なケアが円滑に行われるために、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーションを行う。
・個人、家族及び集団の権利を守るために、倫理的な問題や葛藤の解決を図る。
・看護者に対しケアを向上させるため教育的役割を果たす。
・専門知識及び技術の向上並びに開発を図るために実践の場における研究活動を行う。
専門看護分野には14分野があり、訪問看護においては「在宅看護」や「地域看護」、「がん看護」があり、精神科領域では「精神看護」があります。
・日本国の看護師免許を有すること
・看護系大学院修士課程修了者で日本看護計大学協議会が定める専門看護師教育課程基準の所定単位(総計26単位または38単位)を取得していること
・実務研修が通算5年以上あり、うち3年以上は専門看護分野の実務研修であること
・認定審査(書類審査・筆記試験)を合格すること
・専門看護師認定証交付・登録
・5年ごとに更新(看護実践の実績、研修実績、研究実績等書類審査)
特定行為研修
特定行為研修は、医師の指示をその都度待つ必要がなく、あらかじめ作成された手順書に基づいて、一定の診療の補助(特定行為)を行える看護師を要請する研修のことです。
訪問看護においてもニーズが高く、スキルアップをするために取得したいと希望する人にはおすすめです。
特定行為研修は、全部で21区分38行為あり、訪問看護においては以下のようなものがニーズが高いといえます。
・持続点滴中の高カロリー輸液の投与量調整
・気管カニューレの交換
・胃ろうカテーテル、腸ろうカテーテル、胃ろうボタンの交換
・某厚労カテーテルの交換
・褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
・創傷に対する陰圧閉鎖療法 等
特定行為研修を受けるためには、以下の条件があります。
・日本国の看護師免許を有すこと
・看護師として臨床経験が3〜5年以上あること
厚生労働省が指定する指定研修機関で研修を受けます。学習は講義、演習、臨地実習を行う必要があります。
ケアマネージャー
ケアマネージャーとは介護支援専門員のことであり、介護保険法などを根拠にしてケアマネジメントを実施できる公的資格です。
・法定資格保有者(医師、歯科医師、薬剤師、助産師、看護師、准看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士(管理栄養士を含む)、精神保健福祉士のいずれか)
・生活相談員
・支援相談員
・相談支援専門員
・主任相談支援員
受験のためには、介護支援分野、保健医療福祉サービス分野の学習が必要です。
ケアマネージャーを取得後は、看護師としてではなくケアマネージャーとして働くことができます。
精神科領域におけるキャリアアップ
精神看護領域においてはどのようなキャリアアップがあるのでしょうか。
ここでは、精神科領域で活躍できる資格を解説します。
それぞれ見てみましょう。
精神保健福祉士
精神保健福祉士とは、主に精神保健福祉分野で活動する専門職の国家資格であり、精神的な問題を抱えた人がスムーズに生活を営めるために相談や生活支援をしたり、社会参加の手助けをしたり、環境調整などを行います。
・大学において厚生労働大臣が指定する精神障がい者の保健および福祉に関する指定科目を履修し精神保健福祉士国家試験を受験し、合格する。
・短期大学または専門学校など、厚生労働大臣が指定する精神障がい者の保健および福祉に関する指定科目を履修し、相談援助・実務経験(3年卒は1年以上、2年卒は2年以上)を経て精神保健福祉士国家試験を受験し、合格する。
・大学において厚生労働大臣が指定する精神障がい者の保健および福祉に関する基礎科目を履修し、短期養成施設などを6ヶ月こなして精神保健福祉士国家試験を受験し、合格する。
・短期大学または専門学校など、厚生労働大臣が指定する精神障がい者の保健および福祉に関する基礎科目を履修し、相談援助・実務経験(3年卒は1年以上、2年卒は2年以上)を経て短期養成施設などを6ヶ月こなして精神保健福祉士国家試験を受験し、合格する。
・福祉以外の一般大学卒業後、一般養成施設などを1年こなして精神保健福祉士国家試験を受験し、合格する。
・高校卒業後または福祉以外の一般短期大学を卒業し、相談援助・実務経験(3年卒は1年以上、2年卒は2年以上、高校卒業は4年以上)を経て一般養成施設などを1年こなして精神保健福祉士国家試験を受験し、合格する。
精神科訪問看護においては、より専門的な知識がある精神保健福祉士の同行訪問により評価も新設され、加算がつくことで事業所にとってはメリットがあり、利用者にとっても専門知識のあるスタッフの訪問はより安心できるものといえます。
臨床心理士
臨床心理士とは、臨床心理学に基づく知識や技術を用いて人間のこころの問題にアプローチする心の専門家であり、日本臨床心理士資格認定協会が認定する専門的な資格のことです。
臨床心理士になるためには以下の受験資格が必要です。
・指定大学院(1類・2類)を修了し、所定の条件を充足している者
・臨床心理士養成に関する専門大学院を修了した者
・諸外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後の日本国内における心理臨床経験2年以上を有する者
・医師免許取得者で、取得後、心理臨床経験2年以上を有する者 など
訪問看護において臨床心理士の資格を有するスタッフが訪問することで、利用者が個別のカウンセリングを受けられるメリットがあります。
また、訪問業務だけではなく、訪問看護事業所で働くスタッフへの精神的なフォローもできるため、ニーズは少なくないといえます。
訪問看護だからこそ活かせるキャリアアップのための資格
これまで解説した資格以外に、訪問看護だからこそ活かせる資格があります。
それぞれ見ていきましょう。
認知症ケア専門士
認知症ケア専門士とは、一般社団法人日本認知症ケア学会が認定する更新性の資格で、認知症介護従事者の自己研鑽および生涯学習の機会提供を目的に設けられた資格のことです。
2023年度第19回の受験資格は、認知症ケアに関する施設や団体において2013年4月1日〜2023年3月31日の間に3年以上の認知症ケアの実務経験を有するものとされています。
看護師以外も受験が可能であり、訪問看護の現場においては認定看護師を取得せずに専門的な学習を経て取得できる資格といえます。
終末期ケア専門士
で「支える人」として、エビデンスに基づいたケアの実践を行えることを目的とした日本終末期ケア協会が認定した資格です。
看護師として2年以上、准看護師としては3年以上の実務経験年数を有する必要があり(実務経験は免許登録日以降、申請書類提出日まで)、実務経験証明書の提出が必要です。
実務経験としては、一般の病院や施設、在宅などでの終末期ケアや高齢者ケアの実務経験も対象になります。
この資格を取得することで、訪問看護で働く際にも自宅で最期を迎えたいといった利用者さんへ向けて、より専門性のある看護を提供できます。
急性期ケア専門士
急性期ケア専門士とは、急性期ケア・急変対応におけるスペシャリストであり、状態変化の兆候をいち早く察知し、アセスメントから初期対応、医師への報告など急性期におけるケアの実践を行えることを目的とした日本急性期ケア協会が認定した資格です。
受験するためには、看護師は2年以上、准看護師は3年以上の実務経験を有し(実務経験は免許登録日以降、申請書提出日まで)、実務経験証明書の提出が必要です。
この実務経験を証明する施設等では、救急救命や急性期ケアの専門である必要はなく、職務内容が救急救命や急性期ケアに携わっている限り制限はないとしています。
これまで一般の病院や施設で働いてきた人や、訪問看護ステーションで働いてきた人もこの資格を取得することが可能です。
資格取得後には、在宅療養中の状態変化にいち早く対応できるようになるため、訪問看護の現場においても是非とも取得しておくと利用者さんやご家族も安心してサービスを受けることができます。
キャリアアップのメリット
これまでさまざまな資格をご紹介してきましたが、キャリアアップにはメリットはどのようなことがあるのでしょうか。
それぞれ見ていきましょう。
訪問看護専門の技術や知識を深めることができる
これまで病院や施設で経験してきたことだけではなく、資格を取得後には訪問看護の専門技術や知識を深めることができます。
在宅でないとできないケアや、医師の指示のもと医師を待たずに資格があること(特定行為研修)で実施できる援助も増え、看護師としてのやりがいも感じられます。
訪問看護ステーションの立ち上げや独立を目指せる
病院や施設と違い、キャリアアップすると新たな訪問看護ステーションの立ち上げに携わったり、自分自身で独立も目指せたりします。
何も勉強してこなかった場合と違い、専門的な知識や経験があることで売りとなってくることは間違いないでしょう。
「こういう職場を作りたい」「自分がやりたい看護をしたい」など、これまでの目標としてきたことを自分自身で実現することが可能です。
管理職を目指せる
病院で主任看護師や師長になるためには簡単ではありません。
訪問看護の現場においては、キャリアアップすることで管理職を目指すことができます。
訪問看護ステーションの管理者は正看護師でないとできません。管理職を目指したい方は、キャリアアップできるよう資格取得をおすすめします。
給料がアップする
キャリアアップすると給料アップも望めます。
もちろん、その分やらないといけないことや責任が増えますが給料がアップすれば金銭面の結果が出てやりがいも感じられます。
再就職に有利
訪問看護の経験だけではなく、キャリアアップのための資格取得をすることでその資格の知識だけではなく経験を積むことができます。
そうすると、再就職を考えた時に同じ時期に就職希望した人とは違って断然有利と言えます。
いますぐに転職を考えていなくても、資格取得しておくと今後はメリットは大きいと考えておきましょう。
キャリアアップのデメリット
キャリアアップのメリットはたくさんありますが、実はデメリットもあることを忘れないでおきましょう。
それぞれ解説します。
教育・研修プログラムがない職場もある
訪問看護ステーションによっては、教育・研修プログラムがない職場もあります。
これは、事業所の立ち上げが間もなかったり、元々プログラムを作っていなかったりとさまざまです。
いざ、やりたかった訪問看護で働こうとしてキャリアアップもしたいと考えててもこのような職場だったら資格取得もキャリアアップも難しくなってしまう可能性があります。
オンコール対応もしつつ勉強をしないといけない
訪問看護では、交代でオンコール対応するところがほとんどです。
夜勤をしなくて良いのが訪問看護のメリットではありますが、オンコール対応をすることで自宅での学習時間が限られたり、受験日近くでのオンコールが心身の負担になるといったデメリットもあります。
負担が大きくならないようにスケジュールを組む必要があります。
資格取得のために休職しないといけない場合もある
資格によっては、取得のために休職しないといけない場合もあります。
以前と比べるとWEB研修も増えてきましたが、通学が必要であれば休職もやむを得なくなってしまいます。
休職すると給与がもらえなくなり経済的な問題が生じます。
自分がどの資格を取得したいか、働きながら資格取得は可能かを事前に調べておきましょう。
管理職をしながら資格取得は心身ともに負担になる
訪問看護ステーションの管理者として働きながら資格取得をする場合、管理職の仕事や経営なども同時進行しないといけないため、心身ともに負担が大きくなってしまいます。
また、管理者であってもオンコール担当をしないといけない場合もあるでしょう。
資格取得のためにスタッフへ協力を得られるか、取得する時期を考えるかなど事前に検討しておきましょう。
資格取得のための費用は自費の場合もある
資格取得を支援する事業所があったり、中には支援は全くないという事業所もあったりします。
支援がない場合は、全て自費です。この費用を給与の中から賄わないといけなくなり、負担が大きく感じてしまいます。
事前に支援の有無を確認しておきましょう。
思っていたより手当が少ない場合もある
資格取得をしたら手当がつくと聞いてはいたが、思っていたよりも少額だったとがっかりする場合も少なくありません。
自己研鑽のための学習とはいえ、少額であったらやりがいも感じられなくなります。
手当は具体的にどれくらいか、事前に確認しておきましょう。
(まとめ)訪問看護師がキャリアアップを目指すことでこれまで自分がやりたかった看護を実践できます!
いかがでしたか?訪問看護におけるキャリアアップのための資格やメリット、デメリットについてご理解いただけたと思います。
これまでの病院での療養から、症状が落ち着いたら在宅での療養生活を送る人が増えています。そこで、訪問看護師の活躍の場が広がっているのが現状です。
訪問看護師がこれまで以上に学びを深めることで、事業所全体の質の向上やスタッフの間でもモチベーションの向上にも繋がります。事業所側としても、キャリアアップを目指してもらえることでメリットが大きいです。
病院や施設と違い、訪問看護では利用者さん一人ひとりに向き合う看護を実践することができます。それに加え、キャリアアップを目指して資格取得ができれば、これまでやりたかった看護の実践も可能です。
訪問看護師として働きながらキャリアアップを目指してみてはいかがでしょうか。
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