・訪問看護師の仕事って大変なの?
・訪問看護師を辞めたいと思っている人って理由は何?
・訪問看護の現場を知りたい
訪問看護師として働いている方や、これから訪問看護師になりたいが続けられるか心配でこのような悩みを持ったことはありませんか?
訪問看護師の仕事は、利用者一人ひとりと向き合う看護ができたり、夜勤をしなくて良いというメリットがあります。病棟勤務で夜勤が苦手と感じていた方にとって訪問看護の仕事は魅力的でしょう。
しかし、同時に不安やストレスを抱えてしまい、離職してしまうケースも少なくありません。訪問看護師の離職率は高い職場ともいえます。
今回は、訪問看護師の辞める理由を訪問看護経験者が現場の真実として紹介しています。
訪問看護ステーションへの転職を考えている方や、訪問看護師の仕事を続けるべきか悩んでいる方は是非とも参考にしてみてください。
訪問看護師の離職率
訪問看護師と病棟看護師では離職率の違いはあるのでしょうか。
日本看護協会の「訪問看護の伸び悩みに関するデータ」によると、平成19年度の病院の離職率は12.6%ですが、訪問看護業界全体の離職率は15.0%という結果から比較すると、少し高めであることがわかりました。
事業所数 | 1,911件 |
平成19年度はじめの訪問看護業界全体の看護職員数 | 11,258人 |
平成19年度の訪問看護業界全体の採用者数 | 2,438人 |
平成19年度の訪問看護業界の退職者数 | 2,049人 |
平成19年度の訪問看護業界全体の離職率 | 15.0% |
また、厚生労働省の「看護職員就業状況等実態調査結果」によると、看護師全体の退職理由上位は以下の通りです。
出産・育児のため | 22.1% |
その他 | 19.7% |
結婚のため | 17.7% |
他施設への興味 | 15.1% |
人間関係がよくないから | 12.8% |
超過勤務が多いため | 10.5% |
通勤が困難なため | 10.4% |
休暇がとれない・とりづらいため | 10.3% |
夜勤の負担が大きいため | 9.7% |
責任の重さ・医療事故への不安があるため | 9.6% |
訪問看護師が辞めたいと思う理由
看護師全体の離職理由についてはわかりましたが、訪問看護師が辞めたいと思う理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
病院看護師とは違った訪問看護師ならではのものもあるようです。
ここでは、訪問看護師が辞めたいと思う理由について解説しています。
利用者や家族との関わりの難しさ
病棟看護師と違って、訪問看護師は利用者や家族との関わりがより重要です。関わりが密になっていくためにその難しさを感じて辞めたいと思う理由の一つになってしまいます。
利用者や家族との信頼関係を築くことができ、病状が安定しているときは問題はないでしょう。しかし、信頼関係を築けなかったり、病状も精神面も不安定になってしまった場合に困難さを感じてしまうでしょう。
自分の知識や技術に自信がない
訪問看護師として、自分自身の知識や技術に自信がないことも辞めたいと思う理由の一つです。
病棟看護師と違い、訪問看護では利用者の自宅へ基本的に一人で訪問して看護をします。自分だけで判断して対応する必要があり、すぐに同僚や先輩に相談しにくい状況もあるでしょう。そのため、ある程度の臨床経験やさまざまな診療科での経験が求められます。
また、訪問看護において必要とされる処置や使用する薬剤がこれまで経験したことのないものの場合があるため、不安に思い負担も大きくなってしまいます。
看護業務の多さと責任の重さ
訪問看護では、1日に5〜6件の訪問をします。1回あたり30分から60分が多く、あらかじめ訪問時間が決まっています。
訪問が終了すれば記録をしてまた次の訪問先へ向かいます。時間が決まっていることや渋滞などにより移動に時間がかかってしまった場合に焦ってしまうこともあるでしょう。
訪問中にトラブルや緊急事態に遭遇した際に一人で対応しないといけないことから責任の重さを感じてしまいます。また、業務量も多くうまく対応できなかった場合に負担が大きく退職を考えてしまいます。
また、医療依存度が高い利用者に対して決まった時間内でのケアや、経験したことのない処置を行わないといけないことが大きな負担になってしまいます。
オンコール対応が精神的にも辛い
オンコール対応とは、営業時間外や土日祝日などに体調が悪くなったり緊急事態が起きた場合に、迅速に対応できるように待機して利用者からの電話相談に対応し、必要であれば訪問する体制のことをいいます。
オンコール対応の手当が付く事業所がほとんどですが、オンコール対応をすること自体が営業時間外にも緊張感を強いられてしまい、精神的にも辛いと感じてしまいます。
電話対応だけではなく、必要であれば訪問することも求められるため、精神的・身体的に負担が大きいといえます。
時間外でもゆっくりと休んだ感覚がなく疲労が溜まってしまうと感じてしまうようです。
体力的に辛い
病院とは違って訪問看護では利用者のご自宅などへ車や自転車、徒歩での移動をします。夏は暑く冬は寒く、雨や雪が降る中で移動しないといけません。
もともと体力に自信がある方でも季節や天候によって影響を受けてしまう場合があります。
自転車に乗るのが苦手、車の運転をするのが苦手という方にとっても移動手段によっては訪問件数が増えるにつれ、体力的精神的な負担が多くなってしまいます。
また、入浴介助や身体的に負担が大きなケアを実施する訪問が続いてしまう場合にも体力的に辛く、休憩時間があっという間でしっかり休めずに次の訪問へ向かわなければならないケースも少なくありません。
教育体制が整っていない
教育体制が整っていない事業所で働く場合、十分な教育を受けられないまま訪問看護を行うことになってしまいます。
訪問看護の需要が増加するなか、人手不足のため教育体制が整っていない訪問看護ステーションも少なくありません。多くの利用者さんへの対応が優先され、早い段階から先輩看護師との同行がなくなり一人で訪問しないといけないケースも少なくありません。
訪問看護ステーションによっては、外部の研修やインターネットでの研修などを取り入れていますが、内容や手段もさまざまです。
スタッフとの人間関係がうまくいかない
訪問看護ステーションは小規模な事業所が多く、職員同士でコミュニケーションをとる時間も少ないです。
また、直行直帰を取り入れたり、チャットなどの連絡手段を取り入れている事業所では、スタッフ同士で直接会話することがかなり少ない職場もあるでしょう。
これらが原因となり、スタッフとの人間関係がこじれてしまうと修復しにくく働きにくいと感じてしまい、退職を選択してしまうケースもあります。
将来に対する不安
小規模事業所で働いている場合、キャリアプランを描きにくいと感じてしまうことも退職を考える理由の一つに挙げられます。
子育てをしながら働きたいと訪問看護を始めても、人手不足が解消されずに休みにくかったり相談しにくい環境だと長く働けるか不安に感じてしまうこともあるでしょう。
また、地域に根ざした訪問看護ステーションの場合、事業所の管理者や役職が固定化されているケースも少なくありません。
今後の出世や昇進といったキャリアアップが期待できないことで、退職を考えてしまう方も多いです。
訪問看護の仕事に魅力を感じていたとしても、プライベートとのバランスがとれなかったり、キャリアアップが期待できないことが仕事の継続を諦める理由となってしまいます。
訪問看護の仕事とは?
訪問看護の離職率や離職理由について解説しましたが、訪問看護の仕事自体はどのような内容があるのでしょうか。
一般的な訪問看護の仕事内容を解説します。
健康状態の管理
訪問看護では、健康管理、体温や脈拍、血圧や呼吸状態などのバイタルサインの測定を毎回行います。これは、病棟看護師でも同じです。まずは、利用者が安心して自宅での生活を過ごせるように健康管理を行います。
健康状態については、医師やケアマネージャーへも報告します。場合によっては受信が必要だったり、自宅で生活を継続するためのサービスを見直しや評価したりすることができるため、訪問看護師の大きな役割といえます。
医療処置
医師の指示のもと、点滴や採血、吸引や褥瘡処置、経管栄養、服薬管理などを行います。その他に、在宅酸素や人工呼吸器などの医療機器の管理もあります。
服薬管理については、飲み忘れがないようにカレンダーにセットしたり、Boxを用意して1日ずつセットして利用者が飲みやすくなるようにします。
利用者が終末期である場合は、疼痛コントロールなどの緩和ケアも行うことがあります。
入浴や排泄などの日常生活動作の援助
訪問看護師は、食生活の管理・指導、内服薬の管理、食事や排泄、入浴の介助、屋内外へ移動や車椅子やベッドへの移乗支援、体位変換などの日常生活の支援を行います。
また、認知症や精神疾患の方のケアも同時に行います。
緩和ケア
緩和ケアでは、ご家族、医療、看護、福祉それぞれの職種に大きな役割があります。
訪問看護師の緩和ケアでの役割は、体調や症状の観察、本人やご家族への相談支援、食事摂取や清潔などの日常生活動作の援助、医師の指示による医療処置などを行います。
看取りに関わる大切な仕事であり、状態によっては緊急訪問が必要な場合があります。
利用者本人及びご家族への精神的支援
病気や障害があっても、住み慣れた自宅で過ごしたいという利用者が増えています。そういった生活が送れていても、本人だけではなく介護をしているご家族にとっては身体的・精神的な負担が大きくなることもあります。
訪問看護師は、利用者本人やご家族への相談を受けることも多く、精神的支援も必要とされます。
場合によっては、訪問看護師だけではなくケアマネージャーなどとの連携を行い、問題解決を図ります。
担当者会議への参加
サービス利用開始時、または病状や環境の変化があった際など、必要時に担当者会議が開催されます。
担当者会議とは、利用者本人を取りまくご家族、主治医、ケアマネージャー、訪問看護師、福祉用具担当者などの関係者が集まり、自宅での生活に向けての話し合いのことをいいます。
報告書などの書類作成
訪問が終わった後には日々の記録があります。訪問看護師の業務はここで終了ではありません。記録だけではなく医師や他の看護師への報告・連絡・相談を行い、月ごとの訪問看護報告書の作成を行います。
これは、医師による訪問看護指示書によって提供された訪問看護と、利用者の状況を医師やケアマネージャーへ報告する大事な書類ですので、正確に記載しないといけません。
多職種との連携
住み慣れた自宅で過ごす利用者は、訪問看護以外に介護・福祉サービスを利用されていることも多いです。これらのサービスの紹介や関係機関との連携をとり、必要なサービスについて相談や検討を行い、利用者が安心して自宅で生活を送れるような調整を行います。
訪問看護師を続けたい時の対処法
訪問看護師を辞めたいと感じてしまっても、それでも続けたいという気持ちがあるという方もいらっしゃるでしょう。
辞めてしまう前に、訪問看護師を続けたい時の対処法を知っておくことをおすすめします。
この項目で詳しく解説します。
スタッフと積極的にコミュニケーションをとる
訪問看護では一人で行動することが多いため、自分から積極的に周りとコミュニケーションをとり、自分の思いや負担について理解してもらう必要があります。
また、直行直帰やチャットでの連絡をとっている事業所では、直接顔を合わせて会話することも少ないです。そういう場合は、できるだけ事業所へ出向いてスタッフと話したり、コミュニケーションがとれるようにしていきましょう。
それでもコミュニケーションがとれずに辛い思いをしてしまった場合には、上司に相談して、それでも難しい場合は転職を考えても良いでしょう。
休日は仕事のことを考えずに過ごす
訪問看護師の仕事は、精神的にも体力的にも負担が大きいです。また、利用者の命や人生に大きく関わるため、休日でも仕事のことが常に頭から離れない方も少なくないでしょう。
オンコール対応もあり難しい場合もありますが、休日には仕事のことを考えずにリフレッシュして過ごすようにしましょう。
また、以下のような手段でリフレッシュしましょう。
・自分の趣味に没頭する
・映画や読書をする
・ヨガやジョギングなどの運動をする
・マッサージやエステに行く
・旅行に行く
・たくさん寝る
外部の研修や講義を受けてスキルアップする
今後のスキルに不安を感じた場合、外部の研修や講義を受けてスキルアップを目指しても良いでしょう。
外部の研修や講義を受けることで新しい知識や技術を身につけるだけではなく、外部の看護師や多職種との繋がりもでき、自分自身の糧にもなります。
訪問看護師として常にスキルアップする姿勢も大切です。
本当に辞めるべきかを考える
訪問看護師を辞めたいと思った時、本当にやめるべきかを考えてみましょう。
訪問看護師になりたいと思った理由はどのようなことでしょうか。
自分のスキル不足が原因であれば、経験を積むことで手際良く業務を進められるかもしれません。
人間関係に悩んでいる場合は、自分から行動を起こすことで改善するケースもあり、同僚や上司と相談することも大切です。
しかし、職場環境のような自分の努力で変えられない理由で仕事を辞めたい場合は、転職も一つの解決法です。辞めたい理由を明確にして、何が根本的な理由かを考え、次の行動へ移すと良いでしょう。
同僚や上司に相談する
仕事を続けられないほど辛さを感じてしまったら、感じている負担を抱えたままでは何も変わりません。まずは同僚や上司に現状を報告して、今後について相談してみましょう。
任される業務が自分の経験やスキルに見合っていない場合、改めて指導してもらうなど業務の負担を軽くしてもらえるかもしれません。また、オンコール対応を減らしてもらったり訪問件数を調整してもらったりと対応を検討してもらえる可能性もあります。
しかし、相談しても何も解決しない場合は、職場を変えるという判断をしても良いでしょう。
訪問看護師の仕事は大変だけど多くの人に喜んでもらえる仕事です!
実際には看護の仕事だけではなく、毎月の報告書の作成など事務作業や病院とは違った他職種との連携、訪問看護ステーション内での人間関係で悩んでしまい「こんなはずではなかった」と感じて離職につながってしまうことが多いようです。
辞めたいと思った時、一度「本当に辞めるべきなのか」を考えてみましょう。
訪問看護師になりたいと考えた時、利用者一人一人とじっくり向き合えたり、住み慣れた自宅で療養生活を過ごしたい、夜勤もしなくて良いので自分自身の体調を整えることができるといったメリットがあります。
訪問看護は、在宅医療においてなくてはならない仕事です。地域社会に貢献でき、多くの方に喜んでもらえる仕事といえます。利用者さん含めご家族やその周りの関係者の方からも感謝していただける良いお仕事です。
ただ、在宅医療や地域社会に貢献するお仕事(方法)は訪問看護だけではありません。
他にも可能性は無限に広がっています。
辞めなければよかったと後悔しないためにもしっかりと考え、他の訪問看護ステーションでの継続が可能であれば転職を検討してみても良いでしょう。
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