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コラム
アルコール依存症を持つご家族のSOSはどこに相談ができる?疲れやストレスで悩む場合の対処方法

・アルコール依存症の家族をみていて辛い

・アルコール依存症をサポートしてくれるところはあるの?

・アルコール依存症の家族にどう関わっていいのかわからない

アルコール依存症の家族をサポートしている方で、このような悩みを持っている方は少なくないでしょう。

社会情勢においてもめまぐるしく変化する昨今、さまざまなストレスでアルコール依存症になる方がいらっしゃいます。そのアルコール依存症とはどういった病気なのでしょうか?

楽しく飲酒できれば最高ですが、なかにはそのアルコールで自分自身を傷つけてしまっている方もいらっしゃいます。

徐々にアルコール依存症となり生活面でも社会的にも影響を及ぼしてしまいます。

そして、サポートしている家族も自分自身の心身のことよりも本人の治療を優先するあまり、体を壊してしまう可能性があります。また、家族だけで解決しようとすることで共倒れになってしまいます。

今回は、アルコール依存症はどういった状態なのか、生活への影響や家族の関わり方、相談窓口について解説しています。

アルコール依存症で治療中の本人や家族だけではなく、もしかしたら自分も、家族もアルコール依存症ではないかと悩んでいる方も、是非ともこの記事を参考にしてみてください。

アルコール依存症とは

アルコール依存症とは、病気なのかその人の性格的な問題なのでしょうか。

アルコール依存症とは、厚生労働省によると「飲酒を続け、耐性・精神依存・身体依存が形成され、飲酒のコントロールができなくなる状態がアルコール依存症です。」としています。

アルコール依存症になると、身体・仕事・家族関係などの様々な問題が起きます。アルコール依存症は酔って問題を起こすこととは異なります。

まずは、アルコール依存症の症状について理解しましょう。

飲酒のコントロールを喪失している

飲酒をする機会は人それぞれです。毎日晩酌をする人もいれば、宴会などだけで飲酒をする人もいます。

たいていの人が、飲酒をする際には飲酒後の自分の状態などを考えて飲む量をコントロールしたり、場所や機会を考えて飲んだりすることで、自分自身の心身を整えています。

飲酒が習慣化してしまうと「ほろ酔い」や「お酒なしではいられない」状態になります。

これは、脳の前頭前野の機能が低下し、飲酒への欲求が強まることで、それ以外への興味が薄れてしまうからです。

アルコール依存症になってしまった場合は、その飲酒をする行為自体を脳がコントロールできなくなった状態ともいえます。

強迫的な飲酒の要求

飲酒する機会が継続されてくると、「飲酒しないと落ち着かない」「お酒なしではいられない」といった状態になり、脳が飲酒を止めようとコントロールできない状態になってしまいます。

飲酒しないと不快な気持ちになり、飲酒を抑えられなくなります。

離脱症状

個人差はありますが、アルコール依存症の人が飲酒を止めて、数時間後より以下のような離脱症状が出現します。

  • 手や全身の震え
  • 発汗
  • 吐き気、おう吐
  • 血圧の上昇
  • 不整脈
  • 不眠
  • イライラ感
  • 集中力の低下
  • 幻聴
  • 幻覚

3日以上飲酒を止めると、せん妄やけいれん発作が出現する可能性があります。

飲酒中心の生活

アルコール依存症になると、飲酒中心の生活になってしまいます。

それは、飲酒や酔いの回復に1日を費やす必要があります。

問題が起きても飲酒を止められない

アルコール依存症になると、問題が起きても飲酒を止められなくなります。

それは、アルコールによる脳のメカニズムが影響しています。アルコールは脳に快感をもたらし、また飲酒を止めると離脱症状が出現するなどの身体的な依存、そして飲酒に対する強い欲求(精神依存)が形成されるため、自己制御が難しくなります。

同じ量を飲んでも酔わなくなるため、より多くのアルコールが欲しくなってしまいます。

自己中心的・現実逃避・刹那主義

アルコール依存症になると、アルコールを飲むことで得られる快感や、飲酒をすることでストレスや不安を軽減できるという期待感から、飲酒を欲するようになります。

自分の飲酒を正当化し、嘘をついたり、周囲を責めたりする「自己中心的」な考え方になります。

また、辛い現実から逃げられるのではないかだったりする「現実逃避」や、過去や将来を考えずに目の前の瞬間の感情や生活を最大限に楽しむという「刹那主義」といった飲酒を正当化する考え方によってアルコールから離れられなくなります。

アルコール依存症による生活などへの影響

アルコール依存症になると、これまでのような生活を送ることが難しくなってきてしまいます。

それは具体的にどういう状態なのでしょうか。

健康面の問題

アルコール依存症ではじめに問題になるのは、健康面です。

アルコールの影響で肝臓を悪くし、脳や心臓にも大きく影響を与えてしまいます。

肝臓でアルコールが分解される際に脂肪が蓄積し、脂肪肝や肝硬変を起こしてしまいます。

飲酒をすることで血圧が上昇し、高血圧になりやすくなります。そうすると血管だけではなく脳への影響も大きく、心疾患や脳卒中のリスクが高まります。

脳への影響では、アルコール性認知症や小脳変性症を起こしてしまいます。

そのほかは、膵臓においては自己消化をしてしまうことで膵炎を起こしたり、糖尿病や胃腸症状、消化管の炎症、がんなどを起こすリスクが高まります。

精神的な問題

精神面への問題は、抑うつ、不安、認知機能低下などを起こしてしまいます。

また、長期間にわたるアルコール摂取は、脳の構造や機能を変化させ、記憶力、集中力、判断力などの認知機能の低下を引き起こす可能性があります。

飲酒を止められないことも精神的な問題でもあります。

社会生活の問題

アルコール依存症によって社会生活へ影響して大きな問題にもなります。

これまで働いてきた職場でも、飲酒によって仕事の効率が低下したり、職場でのトラブルによって休職したり、失業に至ることもすくなくありません。

また、自動車の運転ができなくなることで負担が大きくなります。

経済的な問題

アルコール依存症になると、体調不良による休職や仕事の効率が低下したり、飲酒によるトラブルや欠勤などを起こして最後には失業してしまう可能性があります。

また、アルコール依存症に対する治療費や合併症への治療費が重くのしかかってしまいます。

飲酒によるトラブルや飲酒運転などによる事故などへの対応で、自分だけではなく家族にとっても経済的負担が起きてしまいます。

人間関係の変化

これまで述べたことと同様で、飲酒による暴力や暴言で周囲とトラブルを起こしてしまいます。

職場だけではなく、家族や友人との関係性も悪化します。

子どもや家族への影響

仕事ができなくなったり、健康面が整わなかったりすると子どもや家族への影響も大きくなります。

飲酒による暴力や暴言が子どもや家族へ向かってしまうと、共に治療をしていくのは難しくなり、離婚や子どもへの悪影響も考えられます。

仕事上のトラブル

飲酒による暴力や暴言だったり、体調不良による休職や仕事効率の低下だったりがあると、仕事上でもトラブルが起きてしまいます。

これまで通りに働くのは困難になり、失業してしまいます。

飲酒運転

アルコール依存症になってしまうと、アルコールが抜ける時間がかなりかかってしまうのと、離脱症状もありアルコールなしでの生活は難しくなります。

それなのに運転してしまうことで飲酒運転をして事故を起こしてしまう可能性があります。

これは周囲が止めさせようとしても難しい状態です。

暴行

アルコール依存症が暴力行為を行うケースはすくなくありません。

その理由は、お酒を飲んで脳の前頭前野が先に麻痺してしまうと、これまでとは違ってブレーキが利かなくなった車のように暴走してしまうことがあるからです。

アルコール依存症は、家庭内の暴力、子どもへの虐待、配偶者への暴力など、DVのさまざまな側面に関わっています。

窃盗などの事件

アルコール依存症になってしまうと、窃盗などの事件を起こす場合もあります。

生命への影響

健康面と精神面の問題と同様で、生命への影響が大きいです。

アルコール依存症の家族の関わり方

それでは、アルコール依存症の家族はどう関わっていけば良いのでしょうか。

病気の影響として理解する

これまでの状況は、病気の影響だと理解しましょう。

本人ではどうしようも無い状態であるため、健康面や精神面、社会的な問題においても病気が原因で起きてしまうと理解して接することが大切です。

飲酒を責めたり非難しない

アルコール依存症は病気であって、本人ではコントロールができない状態になってしまっています。そのため家族は、飲酒を責めたり、小言を言ったりせず、冷静に話し合う姿勢が大切です。

アルコール依存症であることを本人は理解できていない可能性もあります。アルコール依存症と伝える際は、本人の自尊心を傷つけないようにも穏やかで優しい言葉遣いを心がけましょう。

相談する

都道府県や政令指定都市ごとに各1カ所設置されている精神保健福祉センター、市町村の保健所、精神科病院や専門医療機関など、アルコール依存症について相談し、適切なアドバイスやサポートを受けましょう。

また、アルコール依存症の家族向けの教室に参加し、他の家族と経験を共有したり、専門家からアドバイスをもらったりするのも良いでしょう。

家族自身のケアも忘れない

アルコール依存症の家族は、本人のさまざまな症状や問題に巻き込まれやすい距離にあり、精神的にも大きな負担がかかってしまいます。

家族それぞれ自分自身のケアも大切にし、サポートグループなどを利用して負担を軽減しましょう。

コミュニケーション方法に注意する

一番近い存在である家族だからこそ、感情をぶつけてしまうのは仕方ありません。

しかし、アルコール依存症に向き合うためにはそうなるとお互いに悪い状態に陥ってしまいます。

できるだけ穏やかな雰囲気や言葉でのコミュニケーションをとるようにしていきましょう。

過度に世話をやかない

アルコール依存症の人は、家族が世話をするのを期待することがあります。

しかし、過度に本人の世話をするのは、病気の回復を妨げる可能性があります。

専門機関と相談しながら、できるだけ自立できるような支援をしていきましょう。

家族だけで解決しようとしない

アルコール依存症の家族は、自分たちのことだからと家族だけで解決しようとする場合も少なくありません。

アルコール依存症は病気です。

専門機関や専門家に相談しながら最良な方法で解決を目指していきましょう。

暴力などを受けたら安全を確保する

アルコール依存症になると、周囲へ暴力を振るってしまう場合があります。

暴力や脅迫などの危険がある場合は、家族も安全を確保することが最優先です。警察や専門機関に相談し、安全対策を講じましょう。

嘘をつかない

よかれと思い、アルコール依存症の本人へ向けて嘘をつくことはあってはいけません。

正直に状態や治療法などを話し合い、病気と向き合い、共に解決できるようにしていくことが大切です。

アルコール依存症に対する治療

それでは、アルコール依存症に対する治療にはどのようなことがあるのでしょうか。

本人だけでできることなのか、専門家に頼る必要があるのか、この項目で解説します。

断酒

断酒をすることが必須です。

しかし、断酒するだけでは禁断症状が出現して状況が悪化してしまいます。

いつから飲酒を減らすか、お酒を買い置きしない、飲酒のスピードをできるだけ遅くする、記憶がなくなるような飲み方をしない、お酒の種類を変える、飲酒する前に食事をするなど、本人と相談しながら無理のない断酒方法を決めていきましょう。

断酒会(自助グループ)

断酒会とは、アルコール依存症の本人やその家族が、お互いに励まし合い、断酒を継続するための自助グループです。

例会と呼ばれる集まりに参加し、自身の体験を語ったり、また参加している人の体験を聞いたりすることで、断酒を継続できるようなモチベーションが得られ、サポートも受けることができます。

同じ問題を抱えた仲間同士で互いに支え合い、回復を目指すことが目的とされています。

医療機関を受診する

精神科病院やメンタルクリニックなど、アルコール依存症に対する専門家のいる医療機関を受診しましょう。

飲酒をするようになったきっかけや、一日の生活においてどれくらい飲酒しているか、断酒するためにはどうしたら良いかなど、専門的な視点からアドバイスを受けることができます。

抗酒剤(薬物療法)

アルコール依存症への治療においては、抗酒剤(薬物療法)も同時に行います。

断酒をサポートする薬物療法は、主にアルコール離脱症状の緩和と飲酒欲求の抑制に焦点が当てられています。

離脱症状に対しては、ベンゾジアゼピン系薬剤が用いられ、飲酒欲求に対しては、アカンプロサートカルシウム(レグテクト)が用いられています。

ベンゾジアゼピン系薬剤とは、アルコールと同様に脳のGABA受容体に作用し、離脱症状を軽減します。例えば、ジアゼパム(セルシン)やロラゼパム(ワイパックス)などが用いられます。

抗うつ薬や抗不安薬が使用されることがあります。不眠や気分の落ち込み、不安から飲酒する方には、これらの薬が処方されることもあります。睡眠薬(ベルソムラ、デエビコなど)が処方されることもあります。

アカンプロサートカルシウム(レグテクト)とは、飲酒したい欲求を抑えて、断酒を継続しやすくする効果があります。飲酒しても不快な反応は起こらないのが特徴です。

他に漢方薬が処方されることがあります。精神的なストレスや不安から飲酒する方に対して、漢方薬が処方されることもあります。

認知行動療法

知らず知らずのうちに学習してしまった考え方や行動は、報酬を思い起こさせる引き金に触れると自動的に反応し、強い欲求を生み出します。

認知行動療法では、自分にとって飲酒することへの行動の引き金や、考え方の癖、行動の連鎖に気づき、意識的に自分自身で対処するスキルを練習します。

この練習を続けていると、「飲酒しないと生活できない」「飲酒すると現実逃避ができる」という考え方が、「私は飲酒がなくても大丈夫」というように、依存していたものの力ではなく、自分自身の問題解決能力を信じられるようになっていきます。

リハビリテーション

アルコール依存症のリハビリテーションは、断酒を継続して健康な生活を取り戻すための専門のプログラムです。

主に、入院治療と外来治療の両方があり、様々な活動を通してアルコール依存症に関する知識を学び、断酒を継続するためのスキルを身につけます。

入院してからは、アルコール教育、グループワーク、作業療法、運動療法、薬物療法、栄養療法、自助グループへの参加など多岐にわたる支援を受け、リハビリテーションを行います。

アルコール依存症に対する相談窓口

アルコール依存症の本人や家族が相談できる窓口について解説します。

精神保健福祉センター

アルコール依存症に対する相談は、都道府県や政令指定都市ごとに各1カ所設置されている精神保健福祉センターがあります。

アルコール依存症の本人だけではなく、家族からの相談も受け付けており、地域の自助グループの紹介をしてもらったり、アルコール依存症に対する正しい知識を得られるリーフレットも受け取ることができます。

アルコール依存症に対する専門家のいる医療機関を紹介してもらったりも可能です。

アルコール依存症専門の医療機関

アルコール依存症の治療のためには、専門の医療機関を受診しましょう。

これまでの経過を話して治療などを相談できる自分に合った医療機関を選択していくことも大切です。

精神科領域の専門知識がある訪問看護ステーション

アルコール依存症の治療を継続するためには、普段から見守ってくれる家族以外の存在も必要です。

それは、精神科領域の専門知識がある訪問看護です。

アルコール依存症になるまでの経過や、これまでの治療の経過をもとに、治療だけではなく健康面や社会面、精神面の問題に対しても相談することが可能です。

また、受診する際に医師へ上手く伝えられない場合も、状況を理解している訪問看護のスタッフが情報提供をしてくれるので安心です。

アルコール依存症は、専門機関に相談しながら本人も家族も病気に向き合えるようになります

いかがでしたか?アルコール依存症について記事を読む前に比べたら少しは理解していただけたのではないでしょうか。

アルコール依存症になってしまったことで、精神的な変化も大きく生活面にも社会的にも大きな影響を及ぼし、暮らしにくくなってしまいます。

サポートする家族だからこそ本人を責めたり、家族にも負担は大きくなってしまいます。

共倒れしないためにも、アルコール依存症の専門機関へ相談しながら自分に合った方法で病気に向き合い、安心した生活を送れるようにしていきましょう。