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コラム
アルコール依存症と併発するリスクがある精神疾患は?統合失調症との関係も紹介

・アルコール依存症は病気なの?

・アルコール依存症になると精神疾患を併発するの?

・アルコール依存症の治療はどういうことがあるのかわからない

このように、アルコール依存症に対して疑問に思っている方はいらっしゃいませんか?

飲酒とは、普通に考えると楽しいことだと考えますよね。しかし、さまざまなストレスからの現実逃避などから飲酒量が増え、アルコール依存症になってしまう方もいます。

飲酒量が増え、長期間飲酒していくことでアルコール依存症になってしまい、健康面だけではなく精神面や社会面でも大きな影響が出てしまいます。また、それを支える家族の負担も大きいものです。

実際には、どのような影響や問題があるのでしょうか。

アルコールは肝臓や膵臓などの内臓だけではなく、脳や精神面にも大きな影響を与えています。それを知らないままにしない方が良いでしょう。

この記事では、アルコール依存症と併発する精神疾患について解説しています。

アルコール依存症に対する治療をしている本人や家族だけではなく、最近は飲酒量が増えてしまったと不安に思っている方、ストレスを抱える全ての方も参考にしてもらいたいです。

アルコール依存症と精神疾患

アルコール依存症とは、飲酒を続けることでアルコールに対する耐性・精神依存・身体依存が形成され、飲酒のコントロールができなくなる状態がアルコール依存症のことです。

身体面の影響がでるだけではなく、精神面の影響が大きいためさまざまな問題に発展してしまいます。

精神面の影響とは、どういった状態なのでしょうか。また、アルコール依存症と精神疾患には関係性があるのでしょうか。

次の項目で解説します。

統合失調症

統合失調症とは、思考・感情・行動がまとまりにくくなる病気で、幻覚や妄想などが出現する陽性症状と、意欲低下や感情の鈍麻などの陰性症状があります。

アルコール依存症と統合失調症は別の病気ですが、統合失調症の人が幻覚や妄想などの症状に対してアルコールを摂取し、その量や習慣が続いていくことでアルコール依存症となってしまう可能性があります。

また、統合失調症治療の薬の副作用を苦痛と感じ、飲酒によって緩和させようとした場合にもアルコール依存症を併発してしまいます。

うつ病

うつ病とは、気分が落ち込んだり、悲しみや喜びを感じにくくなったり、日常の生活に支障をきたしてしまうほどの病気です。

主な症状には、意欲の低下や不眠、食欲不振、疲れやすさなどが挙げられます。

アルコール依存症とうつ病は密接な関係があり、飲酒をすることでうつの症状が一時的に緩和されるため、飲酒量が増えたり習慣化していくことでアルコール依存症になってしまいます。

うつ病の人がアルコール依存症になってしまうと、うつ病の症状が悪化し、治療の継続が難しくなってしまいます。

飲酒によって一時的に気分が高揚したとしても、アルコールが抜けるとうつ症状になり、飲酒する前よりも症状が強くなることがあります。

双極性障害

双極性障害とは、気分が異常に高揚して眠らずに活動したり、次々にアイデアが浮かんだり、ギャンブルや浪費などをしてしまう「躁状態」と、意欲が低下して気分が落ち込んみ、何ごとにも興味や関心が無くなったり、自殺したいと考えてしまったりする「うつ状態」を繰り返す病気です。

双極性障害とアルコール依存症は別々の病気ですが、どちらも併発しているケースが少なくありません。

双極性障害で躁状態にある場合にアルコールの使用が増えてしまいます。

アルコール依存症と双極性障害を併発している場合は、それぞれ別に再発予防をしたとしても治療は上手くいきません。どちらも再発しないための対策が必要です。

不安障害

不安障害とは、強い不安や恐怖によって日常生活に影響を来してしまっている状態をいいます。特定のものに過度に不安や恐怖を感じたり、根拠のない不安が強くなってしまいます。

強い不安や恐怖から逃げるために飲酒をすることで一時的には気分が高揚して安心するのですが、アルコールが抜けると再び強い不安や恐怖に襲われてしまうため、再度飲酒をしてしまいます。そうするとアルコール依存症となってしまいます。

アルコール依存症と不安障害は、それぞれに影響が強いため、同時に状態の安定を図っていくことが治療には重要です。

アルコール性認知症

アルコール性認知症とは、長期にわたり大量にアルコールを摂取することで脳に影響を与え、認知機能が低下してしまう認知症の一つです。

症状は、記憶障害や注意力・判断力の低下、見当識障害や作話などがあります。感情のコントロールもできなくなり、不安や抑うつ、怒りなどがあらわれます。

アルコールが脳細胞を破壊し、脳が萎縮してしまいます。ウェルニッケ脳症による眼球運動障害や、運動失調などがみられることがあります。

また、アルコールによって脳血管にも悪影響を及ぼしてしまい、脳卒中や脳血管障害のリスクが高まります。

アルコール依存症と統合失調症の関係

アルコール依存症は、精神疾患と大きく関係していることがわかりました。

この項目では、アルコール依存症と統合失調症の関係を詳しく解説します。

統合失調症患者はアルコール依存症になりやすい

先述したとおり、統合失調症患者はアルコール依存症になりやすいです。

それぞれ違う病気ではありますが、統合失調症患者が幻覚や妄想の症状の対処のために長期にわたり大量に飲酒をすることでアルコール依存症になってしまいます。

飲酒によって幻覚や妄想の症状が落ち着いたとしても、それは一時的なものであるため、アルコールが冷めれば再度、幻覚や妄想の症状が出現する可能性があります。

一時的であっても、治療だと自己判断してしまっていると統合失調症の治療が難しくなってしまいます。

アルコール依存症が統合失調症を悪化させる

アルコール依存症が統合失調症を悪化させるとは?どういうことでしょうか。

統合失調症の症状で、幻覚や妄想があるときに飲酒をすることで一時的に症状が落ち着いたと感じる方がいらっしゃいます。それは一時的に緩和されたと感じるだけであって、アルコールが抜けると再び幻覚や妄想で苦しんでしまいます。

また症状を緩和させようと飲酒をしてしまい、アルコール依存症も悪化してしまいます。

そして、アルコールによって統合失調症の治療薬の効果が減弱したり、副作用が悪化したりする可能性もあります。

それぞれの症状が悪化する

先述したとおり、アルコール依存症と統合失調症を併発していることでそれぞれの症状が悪化してしまいます。

アルコールは、統合失調症の症状を再発させてしまう可能性もあるのです。

併発することで社会的な問題が起きる

アルコール依存症と統合失調症を併発していると、社会的な問題も起こります。

飲酒によって仕事を休みがちになったりして失業したり、それによって貧困に陥ります。また、借金問題などの金銭面での問題が発生してしまいます。

飲酒によるトラブルは、人間関係にも大きく影響します。

遅刻や欠勤などの仕事上のトラブルだけではなく、家族関係の悪化や犯罪、飲酒運転による事故などを起こしてしまう危険性もあります。

併発することで治療が困難になる

アルコール依存症と統合失調症を併発することで、それぞれの治療が困難になってしまいます。

統合失調症の治療薬は飲酒をすることで減弱または副作用の悪化だけではなく、飲酒をすることで症状が緩和されると思い込んで服薬を自己中断してしまう場合もあります。

生命に関わる状態になる

過度な飲酒をすることで、生命に関わる状態になってしまいます。

飲酒によって、脳卒中や肝硬変、膵炎、糖尿病、心疾患、がんなどさまざまな疾患に影響を与えます。

また、統合失調症の症状によっては、交通事故や犯罪、または自ら命を絶とうとしてしまう危険性もあります。

アルコールは脳へどのような影響があるのか

飲酒をすることで身体面へ大きな影響を与えることはわかってきましたが、脳の変化によって、精神面の治療にも影響が出てきます。

具体的な影響を解説します。

注意力・記憶力の低下

飲酒をすることによって、注意力・記憶力の低下が現れます。

飲酒したときに記憶をなくすことを「ブラックアウト」といいます。この症状は、アルコール依存症でなくても起きる脳の軽い記憶障害です。しかし、これが頻繁に起きている場合は、脳に影響が大きくなっている可能性があります。

アルコールは脳の機能をマヒさせ、論理性や思考能力が低下し、これがリラックス効果を引き起こします。

普段であれば問題ないことであっても、注意力も記憶力も低下し、仕事や家族関係の悪化にもつながってしまいます。

脳萎縮

長期的な多量の飲酒は、神経細胞を破壊し脳が萎縮します。脳の機能低下や認知機能の障害を引き起こす可能性があります。

アルコール依存症の人は、脳の老化が早まると言われています。

脳が萎縮してしまってからは元に戻ることはありません。

脳が萎縮してしまうと、認知機能が低下したり、歩行や手の震えなどの運動機能が低下したり、イライラしたり落ち込んだり無気力になったりと感情の変化がみられるようになりま

す。

脳機能の抑制

アルコールは、脳の中枢神経系の機能を抑制します。

幻覚や、アルコールが抜けてからも振戦せん妄がみられます。

ビタミンの欠乏

アルコールは、ビタミンB1の吸収を妨げてしまい、ビタミンB1欠乏症(ウェルニッケ脳症、コルサコフ症候群など)を引き起こします。これらの症状は、認知機能の低下や記憶障害を引き起こし、脳萎縮をさらに悪化させてしまいます。

「ウェルニッケ脳症」とは、飲酒を多量にすることで、アルコールを分解するためにビタミンB1(チアミン)が使われるので、脳内のビタミンB1が足りなくなってしまいます。

症状としては、意識障害や歩行障害、眼振などがあり、特に食事をとらずに多量の飲酒を続けるアルコール依存症の方に多く見られます。

脳卒中のリスクが高くなる

アルコールを習慣的に多少でも飲んでいると血圧が高くなります。 

そして、飲酒を続けて高血圧の状態が続くと、高血圧による血液の圧力に耐えるために、動脈の血管壁が厚くなり(動脈硬化)、脳の血管が詰まり、破れてしまう状態になってしまいます。

そのため、アルコール依存症によって脳への影響は大きいのです。

頭部外傷

飲酒量が多かったり、習慣的に飲酒をすることで歩行状態が不安定になり転倒する可能性があります。

普段であれば特に注意しなくても良い場所であっても、飲酒をすることで注意力がなくなり転倒し、状況によっては頭部を打撲してしまいます。

打ち所が悪ければ、命に関わる状態になってしまいます。

また、飲酒によって血流が良くなり、出血が止まりにくくなってしまっています。

アルコール性小脳失調症

脳萎縮は、認知機能の低下を招き、記憶障害、見当識障害、判断力の低下などの症状を引き起こします。

長い期間、飲酒を続けることで小脳が萎縮し、その機能が低下してしまいます。

アルコール性小脳失調症の症状では、歩行が不安定になったり、ふらついたり、姿勢が不安定になるり転倒しやすくなる、構音障害があります。

アルコール依存症に対する治療のポイント

これまで解説してきた状態にならないために、アルコール依存症を治療するためのポイントは何があるのでしょうか。

詳しくみていきましょう。

統合的な治療

統合的な治療とは、病気を治すだけでなく、患者の生活の質を高め、健康的な生活を送れるようにサポートすることです。

アルコール依存症の治療には、断酒の補助や飲酒欲求の低減、不眠の治療などが含まれます。一方、統合失調症の治療には、抗精神病薬や心理社会療法、リハビリテーションなどが用いられます。これらの治療を統合し、状況に合わせて調整することで、より効果的な結果が得られます。

断酒

アルコール依存症の治療には、断酒が必須です。

しかし、断酒するだけでは禁断症状が出現して状況が悪化してしまう可能性が高いです。

いつから飲酒を減らすか、お酒を買い置きしない、飲酒のスピードをできるだけ遅くする、記憶がなくなるような飲み方をしない、お酒の種類を変える、飲酒する前に食事をするなど、本人と相談しながら無理のない断酒方法を決めていきましょう。

精神疾患に対する治療

という自助グループがあります。

集まりに参加し、自身の体験を語ったり、また参加している人の体験を聞いたりすることで、断酒を継続できるようなモチベーションが得られ、サポートも受けることができます。

同じ問題を抱えた仲間同士で互いに支え合い、回復を目指すことが目的です。

また、統合失調症の薬物療法(抗精神病薬など)と併せて、心理社会療法(認知行動療法、グループセラピーなど)を行うことで、症状の軽減や再発予防、生活機能の向上に役立ちます。

アルコール依存症の治療として、断酒補助薬(レグテクトなど)や飲酒欲求低減薬(セリンクロなど)を用いることがあります。

医療機関へ相談する

精神科病院やメンタルクリニックなど、アルコール依存症に対する専門家のいる医療機関を受診しましょう。

飲酒をするようになったきっかけや、一日の生活においてどれくらい飲酒しているか、断酒するためにはどうしたら良いかなど、専門的な視点からアドバイスを受けることができます。

周囲からのサポート

家族への教育やサポート、相談、周囲からのサポートも重要です。家族が患者さんの病状を理解し、適切な支援を行うことで、治療を効果的に進めることができます。

治療を受ける本人だけでは乗り越えられないことも、周囲のサポートによっては負担も軽減されながら治療を継続することができます。

精神科領域の専門知識がある訪問看護ステーションに相談する

アルコール依存症の治療を継続するためには、普段から見守ってくれる家族以外の存在も必要です。

それは、精神科領域の専門知識がある訪問看護です。

アルコール依存症になるまでの経過や、これまでの治療の経過をもとに、治療だけではなく健康面や社会面、精神面の問題に対しても相談することが可能です。

また、受診する際に医師へ上手く伝えられない場合も、状況を理解している訪問看護のスタッフが情報提供をしてくれるので安心です。

アルコール依存症と精神疾患の関係を理解し、専門家と一緒に治療を継続していきましょう

いかがでしたか?アルコールによる全身への影響をご理解いただけたと思います。

普段、楽しく飲酒する機会も大切です。しかし、量や回数、日数が増えていくと悪影響があり、心も体もボロボロになってしまいます。

本人や家族だけでは乗り越えるのは難しいです。相談できる場所が大切です。

少しでも無理なく断酒して、治療を継続できるよう専門家の力を借りて一緒に治療を継続できるようにしていきましょう。