・双極性障害の影響だとわかっていてもイライラが抑えられずに家族に当たってしまう
・双極性障害の家族は誰に助けを求めたら良いの?
・このままだと本人も家族も疲弊してしまうのではないか?
双極性障害の治療をしている本人や家族、周囲の人でこのような悩みを感じている方はいらっしゃいませんか?
双極性障害の症状の一つに、易怒性があります。自分でわかっていてもイライラを押さえられず、家族や周囲の人に暴言を吐いてしまうことがあります。
その後は、「なんでそんなことを言ってしまったのだろう」と自分自身を強く責めて落ち込んでしまい、症状の改善が困難となってしまいます。
このような問題をそのままにしておくと、双極性障害の治療をしている本人だけではなく、家族にとっても辛く、乗り越えるのに時間もかかるため、関係性が崩壊してしまう可能性もあります。
双極性障害でイライラしたり、暴言を吐いたり、本人だけではなく家族がSOSを出すことはできます。問題解決方法はあるのです。
この記事では、双極性障害の特徴や症状、治療方法、関わり方、相談できる窓口について解説しています。
双極性障害で治療を受けている人や家族だけでなく、パートナーや友人の方もこの記事を参考にしてみてください。
目次
双極性障害でイライラするのはなぜか?
双極性障害の診断を受ける前から、「なんでこんなにイライラするのだろう」とか、「イライラする気持ちが抑えられない」と悩んだ人も少なくないでしょう。
そのイライラは、自分の中でどうにか落ち着いている状態から、自分自身を傷つける「自傷行為」、他人を傷つける「他害行為」まで進んでしまう可能性があります。
理由がわからないイライラが続いていると、落ち着いたときに自分を責めてうつ状態が悪化してしまいます。
そうならないために、双極性障害でイライラする原因を理解していきましょう。
この項目では、双極性障害でイライラする原因について解説しています。
神経伝達物質によるもの
双極性障害において、軽躁状態や躁状態のときにイライラしたり、過度にイライラしてしまうことがあります。これは、脳内の神経伝達物質によるものと考えられています。
特に、ドーパミンやセロトニンなどの物質が躁状態からうつ状態の際に変動することで感情のコントロールが難しくなってしまいます。
ドーパミンは脳内で合成される神経伝達物質で、快感や意欲、運動調整に関与しています。
ドーパミンの働きが活発になると、情報の伝達が過剰になり躁状態が起こると考えられています。その働きを落ち着かせると、感情の働き過ぎをコントロールできます。
また、セロトニンとは「幸せホルモン」とも呼ばれ、脳内で合成される神経伝達物質です。脳の興奮を抑えて心身をリラックスさせる働きがあります。
セロトニンが不足すると、イライラや不安、恐怖などのストレスを感じてしまいます。
双極性障害においても、そのセロトニンが不足することで情緒が不安定になってしまいます。
躁状態
躁状態であることが原因でイライラしているとも言えます。
先述したとおり、軽躁状態や躁状態の際には脳内の神経伝達物質の影響によってイライラが抑えられない状態になります。
混合状態
躁状態だけではなく、混合状態においてもイライラが抑えられなくなってしまいます。
頭の中では次々に考えが沸いていき、活動的になりじっとできなくなります。しかし、行動に移したいのに気持ちが落ち込んでしまっている状態です。
また、行動は躁状態で活発のため、うつ状態に傾いていると「死にたい」という「希死念慮」が強くなり、イライラが抑えられなくなると、実際に行動に移ってしまう危険性も高まります。
このように、心と体の状態が一致していないため、本人にとってはとてもきつい状態になってしまいます。
うつ状態
うつ状態では、気分の落ち込みがあり言葉は少なくことが小さくなります。
イライラしないように感じられますが、自分が置かれている状況や周囲からの影響などの夜焦りやいらだちが全面にでてしまうこともあります。
自分では抑えられない突発的な感情
双極性障害の躁状態やうつ状態において、自分では抑えられない突発的な感情でイライラが起きてしまうことがあります。
自分ではイライラしたくないと思っていたとしても、病気のために脳の神経伝達物質による影響でイライラしてしまう場合があります。
自尊心の肥大
自尊心の肥大とは、自信過剰な状態から自分の能力や交友関係を誇大に考えてしまうことをいいます。双極性障害の躁状態でよくあらわれます。
自分の能力を過大に評価し、自分は特別だという根拠のない思い込み(誇大妄想)があります。自分は何でもできると思い込んでいるため、突発的な行動をおこしてしまいます。
否定されたり、止められたりすることで感情の高ぶりがおさまらずにイライラしてしまい、周囲に盈虚を与えてしまいます。
気分の高揚感
双極性障害の躁状態では、気分が高揚して自分は何でもできるといった感情になります。
気分が高揚してトラブルを起こさければよいのですが、脳内の神経伝達物質の影響によって感情は高ぶったままで落ち着きを見せることが難しくなります。
そうすると、徐々に感情が高ぶりイライラしてしまいます。
思い通りにいかないと感じてしまう
軽躁状態、躁状態、うつ状態、混合状態、それぞれにおいても自分の考えと自分自身の体、周囲の反応などが思い通りにいかないとイライラしてしまいます。
何で自分のイライラがわからないのか、思い通りに動いてくれないのかといった感情になってしまうのです。
コミュニケーションがうまくとれない
躁状態では、自分の頭の中で考えがどんどん沸いて相手のことは気にかけることもなく、会話が自分中心になってしまいます。うつ状態では、気分の落ち込みから声が小さく言葉数も少なくなります。
どちらの状態でも臭糸のコミュニケーションを上手くとることが難しくなります。
コミュニケーションがうまくとれないとストレスを感じてしまうとイライラが強くなってしまいます。
家族だから気持ちをぶつけやすい
一番身近な存在であり、一番心が許せる存在である家族だからこそ、自分の抑えられない感情をぶつけやすくなります。病気でなくてもそうなってしまいますよね。
自分ではわかっていながらイライラが抑えられないという方もいらっしゃいます。
双極性障害でイライラしているときに注意すること
双極性障害でイライラしている状況の時に、本人や周囲の人はどのようなことに注意が必要でしょうか?
まず、自分たちができることから理解をしていきましょう。
自殺に注意する
まずは、本人が自殺をしないように注意して観察していきましょう。
混合状態の際に、頭は活発なのに行動に移せないイライラがストレスとなり、自傷行為をしてしまう可能性があります。
感情や言動に変化はないかに注意して観察が必要です。
自傷他害に注意する
いきなり自殺企図を起こす場合と、リストカットなど自傷行為を起こす場合もあります。
はさみや刃物など、危険なものを身の回りに置かないようにしておきましょう。
しかし、こういう場合はこちらが考える危険物だけではなく、ボールペンなどを使ってしまう可能性もあります。
事故を起こさないようにする
自傷他害行為だけではなく、交通事故などを起こさないように注意しましょう。
自家用車や自転車などを運転しないようにしたり、危険なものがないように観察が必要です。
薬物治療などを自己中断しないようにする
現在行われている薬物治療を自己中断しないようにしましょう。
決まった時間に飲む薬剤や、頓用で使用する薬剤の管理方法を確実にしておく、また、紛失しないような管理方法を家族で決めておくことも良いです。
軽躁状態であれば、症状が良くなったと勘違いしてしまい、治療を自己中断してしまう場合があります。また、受診の必要が無いと考えてしまう場合もあります。
症状が軽快していても、治療を自己中断しないようなサポートが必要です。
突発的な行動に注意する
今までなかった突発的な行動が起きないか注意して観察しましょう。
これまでうつ状態でふさぎ込んでいたのが、徐々に軽躁状態になり、躁状態へ変化し突発的な行動で事故を起こす可能性もあります。
行動や言動の観察が重要です。
イライラした後のうつ状態
双極性障害において、イライラした後のうつ状態も注意が必要です。
急激な落ち込みから、自殺企図を起こす可能性があります。
双極性障害でイライラしたときの対処法
双極性障害で治療中にイライラした状態の本人に対して、家族や周囲の人はどのような対処が必要でしょうか。
また、本人はどのように考えると気持ちが楽になるのでしょうか。
この項目では、双極性障害でイライラしたときの対処法について解説します。
ただし、イライラが強いときの無理な押しつけにならないように注意しましょう。
イライラは病気のせいで本人の人格ではないと考える
イライラしているのは、双極性障害という病気のせいであり、本人の人格が変化しているわけではないと考えましょう。
イライラしている本人もイライラしたくなかったり、相手を傷つけたくないと思ったりしていて強い苦痛を感じています。
そんな状態の相手を見ていると、病気だからと考えるのは難しいと思う人もいらっしゃるでしょう。しかし、共に治療していくためには少しずつ理解を示すことも大切です。
躁状態とうつ状態を繰り返すことを理解する
双極性障害の特徴である、躁状態とうつ状態を繰り返すことを理解しましょう。
この前までは躁状態で活動的だったのに、次は落ち込んでしまうのでどちらも手におえないと家族も疲弊してしまうことがあります。
病気の特徴を理解することから始めるのも良いでしょう。
一人で抱え込まずに、自分が信頼できる人に状態を伝える
双極性障害で治療を受けている本人だけではなく、その家族も一人で抱え込まずに周囲の信頼できる人に状態を伝えても良いでしょう。
話を聞いてもらうだけでも良いですし、治療や経過によっては医療機関への受診なども協力してもらえるかもしれません。
また、躁状態で家族が手におえない際には協力を得られる可能性があります。
規則正しい生活習慣を整える
病気の治療のためには、規則正しい生活習慣が重要です。
不眠が続いたり、夜間に考え込んでしまうと良いことはありません。
また、食事を摂ること、入浴することなど、当たり前の日常生活を少しでも規則正しくできるようにしましょう。
好きなことに集中する
自分の趣味や音楽を聴くなど、好きなことに集中するのも良いでしょう。
これは、散財するような趣味ではなくストレス解消できるような内容が良いです。
好きなことに集中すると、精神的に落ち着いていきます。
運動をする
規則正しい生活習慣において、運動をするのも良いでしょう。
自宅の周囲を散歩したり、イヌの散歩やジョギングをしたりと軽い運動をするのもストレス解消になります。
周囲の人とのコミュニケーションをとれる機会もでき、精神的にも良い影響があります。
薬物療法を継続できるようにする
薬物療法を継続できるようにしましょう。
家族も、薬物療法が継続できているか観察し、本人が苦痛を感じないような声かけをして関わりを持ちましょう。
医療機関へ受診をする
イライラが抑えられずに苦痛を感じたり、家族も不安になったりしたら医療機関を早めに受診するのも良いでしょう。
これまでの経過やイライラしている原因、状況の変化などを主治医へ相談することで内服薬の調整が行われる可能性があります。
しばらく様子を見る前に、早めの受診をおすすめします。
自分は味方であることを伝える
家族は一番の理解者であり、自分たちは味方であることを本人へ伝えます。
双極性障害でイライラしている本人はとても苦痛で、自分ではどうしようもなくなっています。そういうときに家族が寄り添ってくれると感じられることは大切です。
あえて距離をとる
イライラしている本人に、あえて距離を取ることも大切です。
イライラが強く抑えられない状態であると、それをおさえようと家族も危険にさらされてしまう場合があります。
あえて距離を置き、医療機関等へ相談するのもよいでしょう。
専門機関で受ける対処法
それでは、双極性障害でイライラしている場合に専門機関ではどのような対処法を受けられるのでしょうか。
この項目でみていきましょう。
診察、カウンセリング
精神科専門のカウンセリングを受けることで、これまでの生育歴から治療歴などから現在に至るまでの話を聞いて、主治医へつないでくれます。
それらの情報やカウンセリング結果をもとに、主治医の診察を受けて自分に合った治療法が開始されます。
認知行動療法
認知行動療法とは、物事の考え方や行動に働きかけることで、ストレスや悩みを軽減する心理療法です。
うつ病やパニック障害、強迫症、不眠症、摂食障害、統合失調症などの治療も効果があると言われています
ストレスや悩みを軽減し本来の力を発揮できるようにするのが目的です。考え方や行動に働きかけ、自分の考え方や行動のパターンに気づき、改善できるようにします。
その結果、ストレスに上手く立ち向かうことができるようになります。
精神保健福祉士のカウンセリング
精神保健福祉士とは、精神的なところや心に何かしらの障害や病を抱える人々の社会復帰など様々な立場からサポートをする専門の職業です。
主治医の診察だけではなく、治療を継続しながら社会復帰、仕事復帰などは可能なのかなどのさまざまな悩みを受け付けてくれます。
訪問看護による支援
精神科領域の専門知識がある訪問看護ステーションの看護師や作業療法士などによる支援を受けることができます。
身体の観察や内服薬管理、規則正しい生活習慣をつけるなど、さまざまな相談をすることができます。
相談窓口
双極性障害でイライラしてSOSを出したいと考えたとき、どこに相談すれば良いか悩むケースは少なくありません。
悩みを少しでも早く相談することで、状態が悪化せずに経過する可能性があります。
この項目で解説しています。
精神科病院、メンタルクリニックなどの医療機関
これまで受診している精神科病院やメンタルクリニックなどの医療機関に相談しましょう。
症状が出現するのが夜間の場合には、時間帯関係なく相談できるか、時間が決まっているのか、どういった相談ができるかまでを事前に確認しておくことが大切です。
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターでも相談を受け付けてくれます。
現在の治療状況、症状の状態、今後の不安など具体的にしておくと相談しやすくなります。
精神科領域の専門知識がある訪問看護ステーション
家族とともに一番近い存在になるのが、精神科領域の専門知識がある訪問看護ステーションといえます。
精神科領域の経験や知識があるからこそ、細やかな配慮をしてくれます。また、小さな相談から家族支援も受けられます。
訪問看護ステーションによっては、24時間対応してくれる事業所もありますので、自分にはどこの訪問看護ステーションが合うのかを選択できるようにしましょう。
イライラは双極性障害の影響によるものだから、早期にSOSを出して本人も家族も安心に治療を続けられるようにしましょう
いかがでしたか?双極性障害でイライラしてしまうのは、本人にとっては抑えられない状態であり、苦痛が強いのです。
その後は自分の言動や行動に対して強い自責の念を感じてしまい、自殺を図ってしまう危険性もあります。
イライラは病気によるものなので、本人の人格が影響しているわけではありません。
本人の辛さを理解し、家族も自分たちのことだからと我慢せずに、専門機関へ相談・連携し、安心して治療を継続できるようにしましょう。
-
2025年4月26日
-
2025年4月23日
-
2025年2月9日
-
2024年2月4日
-
2025年2月9日