・精神科訪問看護ってどんなことをしてくれるの?
・訪問看護を受ける本人だけでなく家族の支援はどんなことをしたらいいの?
・精神科訪問看護での家族のサポートは効果があるの?
精神科訪問看護を利用するにあたって、本人だけではなく家族支援についてこのように感じたことはありませんか?
精神疾患を持ちながら在宅で生活する本人だけではなく、支える家族も不安や困難を抱えているケースは少なくありません。
誰に相談してよいかわからなかったり、家族のサポートまでしてもらえるかわからないと悩んだままにすると本人だけではなく家族も疲弊してしまいます。
精神科に特化した訪問看護ステーションを利用すると、精神科領域の専門的な経験と知識をもとにご家族へのサポートも行っていきます。
今回は、精神科訪問看護でどんな支援が受けられるのか、活用できる制度、家族が抱えている悩みと家族へのサポートについて解説しています。
精神疾患を持つ本人だけではなくご家族や、精神科訪問看護を利用したいと考えている方は是非ともこの記事を参考にしてみてください。
精神科訪問看護とは
精神科訪問看護とは、精神疾患によるサポートが必要な方に対して、ご自宅やグループホームへ訪問看護師が訪問し、精神科医療に関する専門的な助言や支援を行うサービスです。
住み慣れた環境で専門スタッフのサポートを受けることで、不安を解消し安心して生活を送ることができます。
精神科訪問看護でできること
精神科訪問看護では、精神疾患を持っていたり精神的なサポートが必要な方へ社会生活機能の回復を目的としてさまざまなサービスを行います。
訪問する看護師は、精神科領域の研修を受けていたり、精神科病院の勤務経験があったりと専門的な知識と経験を持ち合わせています。また、精神保健福祉士や作業療法士がご自宅へ訪問することもできます。
この項目では、精神科訪問看護でできることを具体的に解説しています。
日常生活援助
精神疾患によりセルフケア不足になっている方に対し、看護師が入浴介助や歩行訓練、排泄ケアなどを実施します。
自宅での生活において、昼夜逆転や暴飲暴食、睡眠時間をとれていないなど生活リズムが乱れてしまうと病状の悪化を招いてしまいます。日常生活での「衣・食・住」の維持ができるようなサポートを受けられます。
症状のモニタリング
病院に入院している時には、24時間医療スタッフの目が行き届き状況の変化に対応できますが、在宅生活になると症状の悪化に気づきにくい場合があります。
精神科訪問看護により、バイタルサイン測定だけではなく、服薬の管理・指導、自己判断で服薬を止めないような支援が必要です。また、副作用や症状の出現に注意して状態をしっかり見極め、服薬管理だけではなく観察や早期発見を行い、主治医へ報告したり、薬剤師とのやりとりをしながらサポートをします。
内服薬管理
症状のモニタリングと同時に、処方された内服薬をきちんと服用できたかの確認を行います。
今の管理方法は本人にとって管理しやすいのか、管理するための物品は何が必要かなどを本人と看護師や作業療法士と共に問題解決をしていきます。
精神疾患を持っている方だけではなく、自宅での内服薬管理は重要です。
家族支援
精神科訪問看護においてコミュニケーションが重要です。利用者本人や家族とコミュニケーションを取りながら小さな変化も見逃さずに観察していきます。
対人関係では、他人だけではなく同居してるご家族ともコミュニケーションを取るのが難しく、関係性が悪化している可能性もあります。精神科訪問看護では、対象者本人だけではなく、家族へのケアも大切な支援です。
家族の心身の状態を観察したり、状況によっては社会制度の利用も説明します。
対象者本人への対人関係の維持・構築と同様に、家族とも円滑なコミュニケーションが取れるようにサポートします。
医療者間の連携
精神科訪問看護ではかかりつけの主治医の指示の元、利用者の自宅へ訪問します。主治医だけではなく、作業療法士、相談支援専門員、担当保健師、ヘルパー事業など、ケアを行うスタッフとの連携が重要です。
症状の悪化や緊急時の対応など、連絡を密に行うことで対象者やご家族が安心して生活できます。
日常生活において活用できる制度
精神疾患を持つ方が安心して生活を送るためには、どのような制度があるのでしょうか。
この項目では、日常生活において活用できる制度について解説しています。
精神障害者保健福祉手帳の申請
精神障害者保健福祉手帳とは、精神疾患によって長期にわたり日常生活や社会生活に制限がある方を対象に交付される手帳のことです。この手帳を取得するためには、住所のある市町村へ本人の申請が必要です。
手帳の等級は1級から3級まであります。
1級 | 精神障害があって、日常生活の用を弁ずることを不能なら占める程度のもの |
2級 | 精神障害があって、日常生活が著しく制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 精神障害があって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの |
マル障助成については下記記事で解説しています。
自立支援医療(精神通院医療)
自立支援医療(精神通院医療)とは、精神疾患の治療のために医療機関を通院している方が対象です。通院により、精神医療を継続的に受ける必要のある方に対してその通院医療にかかる自立支援医療費の支給が受けられます。
ただし、入院費用や保険適用外の治療、病院や診療所以外でのカウンセリング費用は対象外となります。
申請は、市町村の障害福祉課などの窓口です。申請をするためには、都道府県が定めた「指定医療機関」を通院している場合に適用されます。
申請のためには、本人ではなくても家族が代わりに代理人として申請することも可能です。その際には、委任状と代理人の身元確認ができるもの(マイナンバーカードや運転免許証など)を持参する必要があります。
就労支援制度
就労支援とは、障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援する法律)のもと、就労を希望する障害のある方を企業などの就労につなぐ事業として作られた仕組みのことです。
精神疾患があるため、日常生活だけではなく社会生活も含めて支援を受けられ、就労のための訓練なども受けることができます。
就労支援には、以下の4つがあります。
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
- 就労定着支援
短期レスパイト入院
精神科領域における短期レスパイト入院とは、自宅で療養を受けている本人に入院していただくことで、家族に介護の休息をとってもらうためのものです。
家族の介護疲れによる共倒れを防ぐためにも、家族に休息をとっていただき本人と家族の生活を継続させるために重要です。
家族の抱える不安とは
精神疾患を持ち療養生活を送る本人だけではなく、家族も抱えている不安も大きいです。それを理解されずに悩んでいる家族も少なくありません。
この項目では、家族が抱える不安について解説しています。
それぞれ見ていきましょう。
精神疾患を抱える本人との関わり方がわからない
精神疾患を抱える方との関わり方は、医療者だけではなく家族も悩むところです。病気や症状によっても関わり方が違ってくるため、具体的にどう関わっていいかわからず悩んでいる家族も少なくありません。
家族だからと必死になり関わり方に失敗したと感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
誰に相談していいかわからない
家族のことだからと、世間体を気にして相談することをためらっていたり、誰に相談していいかわからないと悩んでいる家族もいらっしゃるでしょう。
各地域の保健所や精神保健福祉センター、医師や看護師、保健師や精神保険福祉相談員が面談や電話で精神疾患に関する相談を受け付けています。
かかりつけの精神科医へ相談することも可能ですが、本人不在で家族だけでの相談の場合は費用が自費となりますので注意しましょう。
本人が疾患を認めない
精神疾患を抱える方の中には、自分の病気に対する認識が薄い方もいらっしゃいます。
無理矢理受診させようとしたり、認めさせようとすると症状が悪化したり、本人との関係が悪化してしまいます。家族だけで解決するのではなく、専門機関を利用することをおすすめします。
精神疾患を抱える本人を支えることに疲れている
精神疾患は長期化することが多く、サポートする家族の負担も大きくなります。
中には、家族までもストレスを抱えてしまい健康が保てなくなってしまいます。
本人がセルフケアができない
精神疾患の症状では、陰性症状により意欲低下や集中力、持続力の低下などが起きます。それらによって、これまでできたことが急にできなくなってしまうこともあります。
セルフケアができなくなり、家族の介護負担が大きくなってしまった場合は、訪問看護やヘルパーなどの社会資源を利用することをおすすめします。
金銭面に困っている
精神疾患に対する治療のための費用が必要だったり、病気のために金銭管理が難しい方や仕事をするのが難しい方がいらっしゃいます。
経済的に困っている場合は、先述した精神障害者保健福祉手帳や自立支援医療制度などを利用してみても良いでしょう。
暴言・暴力がある
精神疾患の影響で自分をコントロールできなくなり、攻撃的な行動や言動になってしまうことがあります。
一番近くにいる家族に暴言・暴力を振るうケースも少なくありません。
自分の身の安全を第一に本人と距離をとり、病院や外部機関に早めに相談しましょう。
家族支援とは
精神疾患を持つ本人が安心して療養生活を送るためには、家族の支援も重要です。
この項目では、家族支援について解説しています。
家族を支援する理由
精神疾患を持つ本人の一番近くで支えている家族の不安や自責感といった精神的苦悩、支えていくための身体的負担や医療費などの経済的負担、精神疾患に対する偏見から社会からの孤立感などの苦痛を抱えています。
そういった家族の不安や悩みの相談を受け、症状への対処法などを一緒に考えていきアドバイスを行います。また、自宅へ訪問することで生活環境を把握でき、より具体的なアドバイスもできます。
家族支援の方法
家族支援の方法には、以下のような取り組みがあります。
- 家族会
- 家族心理教育
- 一体的支援プログラム
- ペアレント・トレーニング
- 短期入所
同じ悩みを持つ家族同士で話すことで精神的に安定したり、精神疾患に対する理解をするためにもこのような支援を受けると家族の負担も軽減されます。
短期レスパイト入院でのサポート
家族の介護疲れによる共倒れを防ぐためにも、家族に休息をとっていただき本人と家族の生活を継続させるために重要です。
精神科の主治医または精神保健福祉士、保健師、看護師に入院の相談をしてみても良いでしょう。
相談窓口
実際に相談できる窓口にはどのようなところがあるのでしょうか。
詳しくみていきましょう。
自治体の保健所
まずは、公的な相談窓口を利用してみましょう。自治体の保健所では、地域住民の心身の健康増進を担当する行政機関であり、「こころの健康センター」として相談を受け付けています。
また、直接的な相談だけではなく、電話でも相談を受け付けています。
精神疾患の有無だけではなく、本人の現状を正確に伝えること、どんな助けを求めているかを具体的に伝えると良いでしょう。
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターでは、次のような相談に対応しています。
- 情緒不安定な状況が続いている
- 学校や職場に行けない
- 家族との接し方がわからない
- 情報が欲しい
- 話を聞いて欲しい
このように本人の相談だけではなく、家族の相談やサポートも受けることができます。
ただし、ここでは情報提供のみを目的としているため、医療上のアドバイスや診断を行うことはありません。
精神科病院
精神科病院は、少なくとも20床の入院施設があり、症状が悪化した場合にそのまま入院対応ができます。
精神科に受診するといった昔の閉鎖的なイメージで世間体を気にして受診をためらってしまう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、状況によっては集中的に治療をする場合には、軽症から重症までの診察や治療を受けることがメリットでもあります。
心療内科・メンタルクリニック
心療内科やメンタルクリニックでは、外来通院での診療が中心です。
精神科病院とは異なり、平日の夕方まで診療をおこなっているため、日常生活や社会生活の都合に応じて通院しやすいのが特徴です。
会社においても職員のメンタルヘルスへの対応についても重要視されていることから、以前に比べて受診のための抵抗感は少しずつ薄まってきています。
精神科特化の訪問看護ステーション
相談窓口としては、精神科特化の訪問看護ステーションもあります。
精神科特化訪問看護ステーションでは、精神科領域で経験を積み知識を得ている看護師や、精神保健福祉士、作業療法士が勤務しているため、さまざまな相談を受け付けることができます。
また、自宅で療養生活を送る際に訪問看護を利用したい時にもそのまま依頼できるため、あちこちへ相談しなくても良くなり負担が少なくなります。
本人の支援と同時に家族へのサポートを受けて安心した生活を過ごしていきましょう
いかがでしたか?精神科訪問看護でどんなサポートを受けられるかをご存じではない方も多かったのではないでしょうか。
また、精神疾患を持つ本人だけではなく家族も同様に大きな不安や困難を抱えているため、同時にサポートしていく重要性をご理解いただけたと思います。
本人の回復を目指す中で、家族が疲弊してしまうことがあります。家族が健康であるからこそ、本人も回復を目指すことができます。
1人で抱え込むのではなく、制度やサービスを利用してご自宅で安心した生活を送れるようにしていきましょう。
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