・パーソナリティ障害とはどういう病気なの?
・パーソナリティ障害の人は性格が悪いだけじゃないの?
・パーソナリティ障害の共通点を知りたい
自分がパーソナリティ障害を持っているのではないかだったり、パーソナリティ障害についてこのような考えを持っていたりする方もいらっしゃるでしょう。
パーソナリティ障害は病気であり、本人の性格が問題ではありません。病気であることや、正しい知識をもとに理解することが大切です。
パーソナリティ障害には特徴と3つの種類があり、考えられる原因もあります。また、病気と向き合うためには治療を継続していく必要があります。
今回は、パーソナリティ障害とは何かや共通点と、特徴から治療について解説しています。
周囲にパーソナリティ障害で治療中の方がいらっしゃったり、自分がもしかしてパーソナリティ障害かもしれないと考える方、理解を深めたいと思っている方は、是非ともこの記事を参考にしてみてください。
目次
パーソナリティ障害
「パーソナリティ障害」という病気をご存じですか?
この病気のことを知らないままだと、困っている本人や家族への理解ができなかったり、自分自身もそうかもしれないといった不安だったり、正しく関わることができなくなってしまいます。
正しく理解し、関わり方を知ることが大切です。
この項目では、パーソナリティ障害について解説しています。
パーソナリティ障害とは何か
まずは、パーソナリティという言葉について解説します。
パーソナリティとは、その人独特の一貫した考え方や行動様式のことをいい、「人格」「性格」「個性」などと表現されます。
パーソナリティを構成する要素には二つあります。
生まれ持った気質や素質などのその人らしさの基盤となる部分である先天的な要素と、成長の段階で家族や周囲との関係性、知識や経験によって構成される後天的要素です。
次は、パーソナリティ障害についてです。
パーソナリティ障害とは、周りの人とは違う反応や行動をとることで本人が苦しんだり、家族や周囲が困ってしまう場合に診断される精神疾患のことをいいます。
人格障害と同じ意味があり、パーソナリティの問題によって生きづらさや生活しづらさといった問題を生じます。
パーソナリティ障害の共通点とは
パーソナリティ障害には共通点があります。
- 認知・感情・衝動コントロール・対人関係における固定化された不適応なパターン
- 広範囲の社会生活での問題
- 本人の生きづらさ
これらの共通点があり、青年期から成人早期にかけて発症することと、長期間持続することが特徴です。
また、 主な共通点には以下があります。
- 固定的な思考・行動パターン
- 社会生活上の問題
- 本人や周囲の苦痛
- 合併症のリスク
この中でも、うつ病や不安障害など他の精神疾患を合併するリスクが高まることがあります。
パーソナリティ障害の特徴
パーソナリティ障害にはどのような特徴があるのでしょうか。
この項目で解説します。
思考や感情の偏りがある
まずはじめに、思考や感情の偏りがあることが特徴といえます。この偏りとは、物事を捉える方法に柔軟性がなくなり認知の偏りが出てしまう場合があります。
また、自分自身の評価に対しても偏りがあることで、自己評価が低すぎたり、過剰な自信を持つことがあります。
例えば、自分や他人、状況に対して極端に優劣をつけたり良いか悪いかを二極化して捉えてしまったり、感情の起伏が激しく自分でコントロールが難しくなり激しく気分の変化が起きてしまったりします。
そのため、感情の起伏が激しく周囲との関わりにおいてトラブルを起こしてしまい、社会生活に対して困難さを感じてしまいます。
対人関係が困難
パーソナリティ障害の場合、偏った思考や感情のため他者との安定した関係を築くことが困難で、対人関係でトラブルが生じやすくなります。
他者への共感性が欠如してしまったり、見捨てられる不安から相手を過剰に束縛したり、孤立してしまったりといった対人関係を築くことが困難になってしまいます。
見捨てられる不安から相手を過剰に束縛してしまうケースでは、以下のような状況があります。
- 不機嫌になり、激しい怒りを覚える
- 怒りをそのまま相手にぶつけて責め立てる
- 返事が来るまで何度も相手に連絡する
- 相手に幻滅し、急に関係を終わらせる
- 感情をコントロールできずに泣いたり、破壊行為や自傷行為を起こす
- 自傷行為や破壊行為を相手に見せつけてコントロールしようとする
関係性が良い状況だと周囲も感じていても、このように急激な対応をされると対人関係を築くことはできなくなります。
社会生活に支障が出る
パーソナリティ障害になってしまうと、感情の起伏が激しかったり、相手をコントロールしようとしたりすることで対人関係が困難となり、社会生活にも支障が出てしまいます。
また、日常生活を通常通り送れないことでも社会生活において支障が出てしまいます。
これらの他に、社会生活に支障が出る理由には以下のものがあります。
- 感情の偏りが長期間にわたり続くため。
- 自分の言動によって周囲の人を困らせたり、衝突したりする
- 対人関係の不安定さから孤立しやすくなる
- 自傷他害といった行動をとる場合もある
社会生活を送れるようにするためには、治療や周囲のサポートが重要になります。
うつ病を併発する
パーソナリティ障害では、うつ病を併発する場合があります。
うつ病とは、持続的な抑うつ気分や喜びを感じにくい状態が続く精神疾患のことです。
対人関係が困難になってしまうことで、自分は見捨てられたのではないかといった不安を感じ、うつ病を併発してしまう場合があります。
また、さまざまな悩みにより不眠症となってしまい、うつ病を併発してしまいます。
社会不適合症を併発する
パーソナリティ障害では、社会生活を送ることが困難と感じ、社会不適合症を併発してしまうことがあります。
社会不適合症とは、社会規範を無視して他者の感情を軽視して自分を優先する広範なパターンのことをさします。一方、対人関係から距離を置く「社会不適合」のケースもあります。
反社会的パーソナリティ障害ともいい、社会不適合症の側面が強く現れます。
この特徴には以下があります。
- 社会規範や法律を無視する行動を繰り返す
- 嘘をついたり、他人を騙したりする
- 衝動的で計画性がなく、無責任な行動をとる
- 怒りっぽく攻撃的になりやすい
- 他者が傷ついたりしても、罪悪感や後悔をほとんど感じない
- 自分を正当化する傾向が強い
依存症を併発する
パーソナリティ障害では、依存症を併発する場合があります。
これは、依存症パーソナリティ障害と呼び、自己決定が困難で他者に過度に依存する状態です。他人の承認なしでは自分自身での決断ができず、一人でいることに強い不安を抱いてしまいます。
それらは、日常生活や対人関係に支障をきたして配偶者や親、パートナーなど特定の人物に過度に頼ってしまう傾向にあります。
主な特徴には以下があります。
- 過度な世話を欲求する
- 自己決定が困難
- 分離への恐怖を感じる
- 一人でいることへの不安
- 服従的な行動
そのほかの精神疾患を併発する
パーソナリティ障害には、これまで述べたこと以外の精神疾患を併発する場合があります。
例えば、周囲との関係性を築けないことで自暴自棄になり飲酒をすることでコントロールができなくなってしまい、アルコール依存症を併発してしまいます。
他には、社会不安障害やパニック障害、強迫性障害などが挙げられます。また、感情のコントロールが苦手なことから、過食や拒食といった摂食障害が合併してしまう場合もあります。
パーソナリティ障害の種類
パーソナリティ障害の特徴には、大きく3つの種類があります。
それぞれに特徴も違っています。
A群パーソナリティ障害
A群パーソナリティ障害とは、「風変わりな群」とされており、変わり者として周囲から見られる場合があります。
その中には、妄想性パーソナリティ障害、統合失調質(シゾイド)パーソナリティ障害、統合失調型パーソナリティ障害の3つが含まれます。
特徴は、奇妙で風変わりな思考や行動をとったり、他人への不信感や関心の乏しさや社会的に孤立してしまったりします。
本人自身は問題意識がないことが多いです。
B群パーソナリティ障害
B群パーソナリティ障害には、感情や行動が不安定で衝動的な傾向が強く、周囲を巻き込んだり派手な行動が特徴です。この群には、反社会性、境界性、演技性、自己愛性パーソナリティ障害の4つが含まれます。
B型パーソナリティ障害の特徴には、感情の不安定さや過度の感情表現があったり、行動の衝動性や派手さが見られます。
また、他者との関係で感情的な問題を引き起こしたり、共感性に欠けたりすることで対人関係が困難だったり、自分のイメージにこだわり、他者からの賞賛を強く求めるといった問題が起きたりします。
C群パーソナリティ障害
C群パーソナリティ障害には、不安や恐怖心が強く、内向的な特徴があります。
具体的には、「回避性パーソナリティ障害」「依存性パーソナリティ障害」「強迫性パーソナリティ障害」の3つが含まれます。これらは、他者への過度な依存や対人関係の回避、秩序や完璧さへの強いこだわりといった形で現れるのが特徴です。
その特徴には、周囲の評価を過度に気にしたり、批判や拒絶を恐れたり不安が強くなったり、困難な状況や目立つことを避けようとする傾向があります。
また、他者の支えなしには無力感を感じたり、意思決定を人に委ねたりします。自分自身の考える秩序や規則に固執し、完璧主義や細部へのこだわりが強い傾向があります。
パーソナリティ障害の原因
パーソナリティ障害の原因は特定されていません。
しかし、遺伝的要因や幼少期の環境要因、そしてそれらの相互作用によって影響を受けるとも考えられています。
また、脳機能の個人差といった要因や、人間関係の困難さ、社会的なストレスなども発症に関与する可能性もあります。
この項目で解説します。
遺伝的要因
生まれ持った気質や、性格の傾向などの遺伝的要因がパーソナリティ障害の症状に影響を与えることがあります。
遺伝的要因になるものは、衝動性や情動の不安定さに関わる遺伝子が、パーソナリティ障害の発症リスクを高める可能性ともいえます。
脳の発達障害
生まれつきの脳機能や脳の発達障害も要因の一つとして考えられています。
パーソナリティ障害において感情のコントロールに関わる脳の部位(扁桃体や前頭前野など)の機能異常が、感情の不安定さや衝動性につながることが示唆されています。
また、脳内の神経伝達物質の働きも、気質やパーソナリティ障害の発症に関わっている可能性があります。
生育歴
パーソナリティ障害を持つ人の中には、幼少期や思春期の虐待(身体的・性的・情緒的)、ネグレクト(育児放棄)、不安定な家庭環境などが、パーソナリティ形成に大きく影響することが指摘されています。
また、機能不全になってしまった家族や、親子間の安定した愛着関係が欠如している環境で育った場合もパーソナリティ障害の原因となることがあります。
特に境界性人格障害では、幼少期の虐待体験が高い確率で見られることが報告されています。
社会背景
パーソナリティ障害を起こしてしまうには、社会背景も要因になる場合があります。
いじめや災害、事故などの社会的な出来事や、人間関係の困難、社会的なストレスなどもパーソナリティの偏りを引き起こしてしまうのです。
人間関係
パーソナリティ障害の原因には、遺伝要因と環境要因が相互作用していると考えられています。
これまで述べた生育歴や社会背景において形成されるべき人間関係が影響しているのです。
パーソナリティ障害の治療
パーソナリティ障害の治療においては、精神療法と薬物療法の二本柱が重要となります。
治療を継続させるためには、本人の気持ちが重要であり、専門家と相談しながら一人ひとりに合った治療計画を立てることが大切です。
この項目で見ていきましょう。
精神療法
精神療法には以下のものがあります。
- 認知行動療法(CBT)
- 支持的精神療法
- 精神分析的精神療法
- 転移焦点化心理療法(TFP)
- 集団療法
薬物療法
薬物療法には、うつ症状や不眠に対して、抗うつ薬(SSRIなど)、抗不安薬、抗精神病薬、気分安定薬などが使用されます。
薬物療法はあくまで対症療法であるため、パーソナリティ障害の根本的な治療には精神療法と併行して行われることが多いです。
治療を継続させるためには、本人の治療をしたいという強い気持ちと長期的な視点、専門家の連携、訪問看護などのサポートも重要なものになります。
パーソナリティ障害を正しく理解し、病気と向き合い自分らしく生活していきましょう
いかがでしたか?パーソナリティ障害と診断を受けるまでは、自分自身の性格が悪いのかと思ったり、周囲から性格が悪いと判断され辛い思いをしてきた方もいらっしゃったかもしれません。
しかし、パーソナリティ障害とは病気であり、きちんとした知識を得て治療を継続することで自分らしく生活することが可能なのです。
正しい知識と支援を受け、無理のない自分らしい生活を送れるようにしましょう。
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